「あの子、死んだ?」。周囲の大人たちに取り押さえられた少女はうわごとのようにつぶやいた。その瞳には、光が宿っていなかった──。8月20日午後7時半頃、東京・渋谷区の路上で、53才の母親と19才の娘が刃渡り8.5㎝の包丁で切りつけられた。
「犯行現場は神泉駅近く。背後から襲われ、背中や腹のほか肩や腕などを執拗に何度も刺され、母娘ともに全治3か月以上の重傷を負いました。強い殺意があったようで、娘の方の傷は深さ10㎝ほど。腎臓にまで達していたそうです」(社会部記者)
殺人未遂容疑で逮捕されたのは埼玉県戸田市の市立中学に通う3年生のA(15才)だった。
「当初、Aは警察の取り調べに対して『死刑になりたくて、たまたま見つけた2人を刺した』などと供述していた」(前出・社会部記者)
Aのポケットからは、長さ9cmの折りたたみナイフと、長さ7cmほどの果物ナイフも見つかった。Aは逮捕後、犯行の動機を詳しく話し始めている。
「自分の母親を殺そうと考え、『自分に本当に人が殺せるのか確かめたかった。予行演習をしたかった。母親に似た人を狙った』と言うのです。『不機嫌になると態度に出る母親に自分も似てきていると思った。それが嫌で殺そうとした』と。また、母親の遺体を見たらかわいそうだからと、1才年下の弟も殺そうとしていたそうです。殺害を計画し始めたのは最近だといいます」(前出・社会部記者)
小学生時代のAは、サッカークラブで活躍していたという。
「いまはショートカットだけど、昔のAちゃんは長い髪を結んでサッカーをしていました。弟さんを連れて練習に向かう姿をよく見かけましたよ。たしか4、5年前に両親は離婚したようですが、家族のトラブルは聞いたことがありません。お母さんは、保険会社の管理職を務めるしっかりとされたかたで、美人。お仕事でお母さんがいないときはAちゃんが家事をやっていました。勉強もよくできたんじゃないかな」(近隣住民)
しかし、中学校に入学すると、家族のかたちは少しずつ変化していく。Aは、1年生の3学期から不登校気味に。登校した際も、別室で自習などをしていたという。
「Aの母親は、警視庁の事情聴取に対し、『娘は部活をやめたことや友人関係を理由に学校に行かなくなった』と話しているといいます」(別の社会部記者)
母親いわく「口数が少なく冷静で、真面目な性格だった。厳しく注意をしても、淡々と返事をしていた」というA。犯行当日も、その様子は変わらなかった。