「みんなでカラオケに行きますと、そろそろお開きというときに『サライ』を歌う。そんな社会現象まで生まれました。みんなが歌い始めると、私は“さぁ、いよいよ間寛平、日本武道館が見えてまいりました……”と実況中継を楽しんでいます(笑い)。名曲はたくさんありますが、ブームで終わらずに年代も問わず、歌い継がれている。まさに、名曲中の名曲だと思います」
こう感慨深げに語るのは徳光和夫(81才)。『24時間テレビ』(日本テレビ系)の総合司会として、そしてランナー、現在はサポーターとして、番組のエンディングを飾る『サライ』を背に、感動の涙を幾度となく流してきた──。
今年6月にコンサート活動からの引退を発表し、12月に最後のステージを迎える加山雄三(85才)。8月27〜28日に放送される45回目の『24時間テレビ』で『サライ』を歌唱するのもこれが最後となる。
『君といつまでも』『旅人よ』『海 その愛』など数々のヒット曲を生み出してきた加山だが、なかでも『サライ』は老若男女問わず愛され続けている名曲だ。超長距離の道のりを走り続けてきたチャリティーマラソンのランナーを、ゴールで出演者らが『サライ』を大合唱して出迎える。数々の感動は、常にこの曲とともにあった。
最初に浮かんだ歌詞はサビだった
加山がこの曲を作曲したのは、放送15回目の1992年。このときの『24時間テレビ』のテーマが「愛の歌声は地球を救う」だったことから、企画の1つとして「エンディング曲を番組内で作る」ことが決まったという。
作詞を担当したのは谷村新司(73才)。まず加山が作曲し、谷村は番組中にFAXで送られてきた視聴者からのメッセージをもとに、加山の曲に合わせて詞を書き上げる。そして出来上がった曲をエンディングで全員が歌う──まさに前代未聞のチャレンジだった。谷村がその舞台裏を語る。
「最初に聞いたときは、“はぁー!?”って思いましたね。8時間で作曲し8時間で作詞、残りの時間でアレンジをして、エンディングで歌う。そんな無謀な企画があるのかって(苦笑)。
でも、メロディーを作るのが加山さんだとお聞きして、やれそうな気がしたんです。加山さんはぼくらの時代の憧れの存在。自分で曲を作って歌うことを教えてくれた人ですから。無茶だという思いより、加山さんと一緒に歌を作れる喜びの方が大きかった。だから、とにかく8時間がんばってみようと思えたんです」
実は「作詞は谷村で」というのは加山からの指名だった。
「それまで加山さんと一緒に仕事をしたことはなかったので、そんなふうにぼくのことを見てくれていたんだといううれしさと驚きがありました。加山さんが楽曲を作っているとき、“谷村と歌うのをイメージして書いてるからね”っていう連絡が来たんです。いざ完成したメロディーを聴いたら、ものすごく壮大な、すごくいいメロディーだった。うれしかったのと同時に、プレッシャーも大きくなりました」(谷村・以下同)
作詞作業に入ると、こんなサプライズも待ち受けていた。