子供の頃、親に「テレビばかり見ていると頭が悪くなる」と言われたことがある人は多いだろう。だが、一方的に情報が送られてくるテレビよりも、24時間休みなく双方向に情報が行き来するスマホの方が、脳に与えるダメージは大きい。スマホ依存防止学会代表の磯村毅さんによれば、スマホはテレビの4倍も脳を興奮させるという。
「画面にタッチすると反応があるスマホは、脳にとって極めて強い刺激になります。実際にアメリカの研究者が800人を対象に行った研究では、スマホを触らなくても、机の上に置いてあるだけで意識が引っ張られ、脳の認知能力が低下しました」(磯村さん)
スマホで使える多くのアプリの中でももっとも危険度が高いのが、LINEやTwitterなどのSNSだ。絶えず通知が来る設定にしていると集中力が削がれ、学力にも悪影響を与える。東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太さんが言う。
「スマホで動画を見たり調べものをしているときにLINEの通知が来ると、中断してメッセージを確認しようとします。この『スイッチング』が極端に集中力を下げることがわかっている。SNSは、その存在自体が子供の集中力を下げるのです」(川島さん・以下同)
スタンプ1つで返事ができるLINEや140文字までしか投稿できないTwitter、15秒〜3分のショート動画が延々と再生されるTikTokなど、インスタントなコミュニケーションやコンテンツが当たり前になると、社会生活において重要な読解力や、人の気持ちをくんで対話する能力が養われなくなる恐れもある。
「同じ文章でも、紙ではなくデジタルデバイスで読むと理解度が低くなるという研究があります。スマホを使いすぎると脳が働かず、さまざまな事象や因果関係を読み解く理解力が身につきません。
昔と比べて運動する機会が減り、デジタル機器にどっぷり浸かっているいまの子供たちは、高齢になってからアルツハイマー型認知症になるリスクが上がるという予測もある。いまの子供たちが大人になる頃には、認知症発症年齢が下がっているかもしれません」