安倍晋三・元首相の国葬について国民からの反対意見が高まっても、自民党内からは疑問の声が上がらない。そんななか、最重鎮のひとり、山崎拓・元自民党副総裁が、政権に警鐘を鳴らす。
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今回の国葬決定をめぐっては、岸田文雄・総理の判断が先走りしすぎたという印象を持っています。かつて佐藤栄作・総理が吉田茂・元総理の国葬を決めた時は、全国民からの支持が得られるようなさまざまな努力、根回しがなされました。
国家の政治構造は三権分立であり、国権の最高機関は国会です。やはり、国葬については国会に諮るべきだったと思います。衆参の両議長を通じて議運(議院運営委員会)にかけ、野党の反対意見にも耳を傾けたうえで決定すればよかったと思う。
しかし、今回は残念ながらそうした段階を踏まず、総理がパッと決めてしまった。記者会見で発表し、事後的に閣議決定をしたわけです。
なぜそんなに急がなければならなかったのか。盟友の安倍さんが亡くなったことへの想い、自らが葬儀委員長を務めるという意志が強かったのでしょう。亡くなった直後は国民から悼む声が多く、国葬についても理解を得られると思ったのかもしれません。
しかし、現実には統一教会問題への批判、新型コロナの感染拡大もあり、国葬への反対意見は日増しに増えています。
戦後の総理経験者では唯一の例である吉田さんには特別な、国葬に値する功績がありました。それは独立の回復です。昭和27年の4月28日、私が高等学校に入った年ですよ。小学校3年から中学校3年までは占領下にあった。独立を回復したという、日本人にとってそれ以上の功績はありません。
吉田さんの愛弟子であり国葬を取り仕切った佐藤栄作さんは、独立後も20年間、残されていた沖縄返還を成し遂げましたが、その佐藤さんですら国葬ではなく国民葬でした。
それ以来、我が師である中曽根(康弘)さんは内閣・自民党合同葬ですし、国葬の例はありません。果たして安倍さんに国葬に値する政治的功績があるのか。まずは国葬についての基準を議論すべきでした。
だが、いったん決めてしまった以上は、もうどうにもならない。国際社会に向けて案内状も出してしまっており、万障繰り合わせて、世界中からVIPが来るのですから。
やれば大きな批判を受けますが、やらなければより大きな政治問題になり、引責辞任しかない。岸田さんは後戻りのしようがありません。その判断はあまりに拙速でした。