国際的な観光都市として知られる京都市が、新型コロナウイルスの感染拡大による観光の低迷などによって急激な財政悪化に悩まされている。対策のひとつとして、手厚い事で知られる市民サービスも削らざるをえず、そのひとつ「敬老パス」対象年齢を段階的に引き上げることになった。京都市に限らず、名古屋市でも無制限から利用回数に制限ができるなど、自治体の敬老パスは徐々に利用制限や廃止というケースが目立ってきている。一方で、鉄道会社からは、お得な新商品としてシニア向けの乗り放題パスの発売が続いている。ライターの小川裕夫氏が、通勤や特別な観光ではない、新しい需要創出に取り組む鉄道会社の挑戦についてレポートする。
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1970年代に盛んに導入された敬老パスは、地方自治体が高齢者を対象にバスや鉄道といった公共交通の運賃を補助することで成り立っている。定年退職して仕事を辞めてしまうと、家から外出する用事がなくなる。こうして高齢者の外出機会は減少する。敬老パスは、こうした高齢者の外出を促すことにつながり、それは健康増進にもつながる。結果的に、自治体は医療費負担を縮減できる。
他方で、敬老パスに高齢者優遇・不平等といった批判が噴出。そうした批判もさることながら、近年は少子高齢化に伴い高齢者の絶対数が増えたことや自治体財政が逼迫していることなどを理由に敬老パスを廃止・縮小する潮流になっていた。
高齢者の外出が減少すると、鉄道・バスといった交通事業者の収支にも大きな影響を与える。2010年以降に現役世代が大量に定年退職し、それに伴って通勤需要も大幅に減少した。これには鉄道事業者も頭を抱えたことだろう。
さらに鉄道会社に打撃を与えたのが、2020年初頭から新型コロナウイルスが感染拡大したことだ。コロナ禍により、多くの人たちが外出を自粛。企業もテレワークを導入したことで、通勤需要はさらに低下した。
京王電鉄は70歳以上を対象にした1か月5000円で京王線・井の頭線の全線が乗り放題になる「シニア全線パス」の発売を発表。同パスは200枚限定発売で、9月分は8月10日から募集を開始た。
「京王電鉄はコロナによって高齢者の外出機会が減少していることを受け、今回の『シニア全線パス』の発売を決めました。現段階では、手探りで企画を進めている状態です。そのため、1期が10月、2期が11月、3期が12月ということと価格が3期すべて5000円ということぐらいしか決まっていません」と話すのは京王電鉄広報部の担当者だ。