1980年代から1990年代にかけて、『世界まるごとHOWマッチ』(MBS・TBS系)、『オールスター感謝祭』(TBS系)などのテレビ番組で活躍したチャック・ウィルソンさん(75)。筋骨隆々の体格と、べらんめぇ口調の日本語で人気を博したが、幼い頃は「ヤセでドジの気弱なチャック」と呼ばれていた。75歳になったチャックさんが、幼少時代を振り返る。【全3回の第2回。第1回から読む】
「5歳の時に高熱の病気で不整脈になり、15歳まで生きられない、と言われたんです」──現在の逞しい肉体からは想像できないが、子供の頃は病弱だったとチャックさんは語る。
アメリカ・ボストン生まれのチャックさんは5歳の時に心臓の不整脈を患い、友達と遊ぶことやスポーツ活動を禁じられ、放課後はまっすぐに帰宅していた。12歳頃まで、親や医師から「あなたは心臓が弱いから、動いてはダメだ」と言われて育った。
「『お前は弱い』と毎日言われ続けると、潜在意識の中で『自分は弱い』と思い込んでしまうんです。だから自分に自信が持てず、内向的になり友達ができなかった。当時は親の事情で引っ越しも多く、周囲の子供から馬鹿にされたりいじめられたりして、まだ幼いのに『俺は一匹狼なんだ』という感覚になっていました」(チャックさん。以下同)
「将来は犯罪者になる」
アメリカでのいじめは壮絶で、いじめを受けた子供が死体で見つかることもあった。体力のないチャック少年は自分の身を守るため、いじめられっ子同士でグループをつくったという。だが、自分の存在価値を見出せずにいる子供たちは胸の内に鬱屈を抱え、やがて犯罪に手を染めるようになった。
「遊び半分のいたずらがエスカレートして、車やモノを盗むようになり、日本でいう少年院に入れられたこともあります。大人たちからは『将来は犯罪者になる』と言われた。本来、家族が支えになるはずだけど、父は僕が7歳の時に蒸発。母がウエイトレスをしながら生計を立てていました。僕は妹の面倒を見ながら、外に出ると仲間と悪さばかりしていました」