カラオケの演歌ランキングで常に上位に入る『天城越え』。この曲を上手に歌いたい──名女優たちも考えることは、われわれと同じようだ。しかし、さすがは芸能人。“ご本人登場”の歌う会を開催したという。奇跡の一夜を振り返る。
年末まで4か月を切り、音楽業界では早くも、「紅白出場歌手」について囁かれ始めている。
「近年、視聴率へのテコ入れが進み、ベテラン演歌歌手の“紅白卒業”が相次いでいます。そんななか、大御所なのに早くも“当確”だといわれているのが、石川さゆりさん(64才)です。紅組歌手としては歴代最多の44回出場で、今年はデビュー50周年ということもあり、トリを飾るのではともいわれています」(レコード会社関係者)
近年、紅白では自身の代表曲である『津軽海峡・冬景色』と『天城越え』を交互に歌っており、順番でいえば今年は後者にあたるという。
「この曲は過去に12回披露されていますが、直近の2020年は、人気アニメ『鬼滅の刃』の音楽を手がけた作曲家とコラボ。2018年はミュージシャンの布袋寅泰さん(60才)と迫力のあるステージをつくり上げました。今年は記念イヤーということもあり、さらにスペシャルな『天城越え』に期待が高まっています」(前出・レコード会社関係者)
『天城越え』がリリースされたのは、石川が28才となった1986年7月。夫の不倫現場に踏み込み、殺意を抱くほどの怒りをあらわにしながらも、夫から離れることもできない。そんな女の激情を描いた歌詞だ。
当時、石川は1981年に結婚した夫との間に生まれた4才になる娘がおり、子育ての真っ最中。歌手としてステージに立つかたわら、家庭ではよき妻、よき母であろうと奮闘していた。
「作詞家の吉岡治さんらが、石川さんの新たな可能性を開くために“幸せなさゆりを壊しちゃえ”という号令のもと、曲を作った。その結果、生まれたのが『天城越え』でした。石川さんは曲を受け取った後、“私にはとても歌えない”とひどく困惑したそうです」(音楽関係者)
それでも、石川は何度も歌詞を読み込み、曲の世界観を必死に取り込もうとした。最終的には自分とは別の人格を演じ切ることで、レコーディングに臨んだという。
そんな努力がありながらも、発売当初は売り上げが伸びず、ヒットチャートの圏外だった。「この曲のことは忘れて、早く新曲を」という声も聞こえるなか、徐々に売り上げを伸ばしていき、同年のレコード大賞で金賞を受賞。石川はこの曲で紅白で初めて紅組のトリを飾ったのだった。
以来、『天城越え』は彼女の代表曲のひとつとして、そして日本人の“心の歌”として長く歌い継がれてきた。彼女が歌を真に自分のものにできた陰には、人生を変える一夜があったという。
大女優は立て膝で歌った
『天城越え』が発売されて間もない1986年の秋口、石川はカラオケ設備のあるバーラウンジに向かった。店に顔を揃えていたのは、森光子さん(享年92)、浅丘ルリ子(82才)、加賀まりこ(78才)、石坂浩二(81才)、そして大橋巨泉さん(享年82)という大物たちだった。