スポーツ

高校野球強豪校で「外人部隊」だった元球児が第二の地元に定着するまで

2022夏の甲子園優勝は宮城県の仙台育英高校。宮城県を中心に東北出身の選手が多い(時事通信フォト)

2022夏の甲子園優勝は宮城県の仙台育英高校。宮城県を中心に東北出身の選手が多い(時事通信フォト)

 インターハイ取材時に、優勝選手にインタビューしようとしたら、日本語も英語も話せず、慌ててコーチに通訳をお願いしたと新聞記者が苦笑していたことがある。スポーツを強くしたいために外国人留学生を呼んだものの、勉強も地域との交流もおろそかにして練習だけさせた結果、そのようなことになったらしい。ここまで極端ではなくとも、地元選手が一人もいない●●県代表校という存在は、高校野球では珍しくない。県外の人、その地域の外の人という意味で「外人部隊」と揶揄されることもある高校球児は、学校の地元とどのように向き合っているのか。ライターの森鷹久氏が、元「外人部隊」選手に聞いた。

 * * *
 夏の甲子園大会は、宮城代表の仙台育英高校が、東北に初めて深紅の優勝旗を持ち帰るという歴史的な形で幕を閉じた。お祝いムードが漂う一方、ネット上では、優勝メンバーの中に「宮城・東北出身でない球児が複数いる」という指摘もある。そして「強豪チームは“外人部隊”だから強い」という結論に落ち着くのも、近年の一つの流れである。

「僕も元“外人”でしたね。かなりいろいろ言われて、高校生の自分にはつらいことも多かったですが、そういう困難を乗り越えたことも、自分の自信にはつながっているのかと思います」

 黒木啓治さん(仮名・30代)は、高校三年時にX県代表として夏の甲子園大会に出場。出身はX県と同じ地方の別の県であったが、新設校でスポーツにも力を入れたいという母校の意向、そしてチーム監督の強い手引きがあり、高校進学と同時に自宅を出て、寮生活を始めた。

「新設校だったこともあり、新たに集められたメンバーのほとんどが、他県出身者。レギュラーメンバーに至っては、県内出身者は一人のみ。練習試合に行くと、寄せ集めとか外人とか、こそこそ嫌みを言われることもありました」(黒木さん)

 県内にある野球の強い公立高・伝統市立校は、保護者や地元からの力強いバックアップがあったが、黒木さんのチームにそういった後ろ盾はなく、孤立感、後ろめたさまでを感じることもあったと振り返る。

 しかし、そういった困難は、練習を重ね、県内外の強豪校と練習試合などを重ねていく内に、自然に薄れていったという。

「応援されない寂しさはありましたが、県外には同じような境遇の中で頑張る子はたくさんいたし、他人の目を気にしなくなっていったんですね。強くなるためにはこれを乗り越えるしかないと」(黒木さん)

 結局、黒木さんが三年生になる頃には、チームは県下随一の「優勝候補」と目されるようになり、さまざまな揶揄の声も少なくなっていった。

「いや、それでも、部外者ばかりという人は、高齢者を中心に多かったと思いますよ。県内の別の私立校も県内各地から選手を集めていたんですが、それですら“やり過ぎ”と地元では揶揄される」(黒木さん)

関連記事

トピックス

田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
明るいご学友に囲まれているという悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さまのご学友が心配する授業中の“下ネタ披露” 「俺、ヒサと一緒に授業受けてる時、普通に言っちゃってさぁ」と盛り上がり
週刊ポスト
「大宮おじ」「先生」こと飯田光仁容疑者(32)の素顔とは──(本人SNS)
〈今日は〇〇にゃんとキスしようかな〉32歳無職が逮捕 “大宮界隈”で少女への性的暴行疑い「大宮おじ」こと飯田光仁容疑者の“危険すぎる素顔”
NEWSポストセブン
TUBEのボーカル・前田亘輝(時事通信フォト)
TUBE、6月1日ハワイでの40周年ライブがビザおりず開催危機…全額返金となると「信じられないほどの大損害」と関係者
NEWSポストセブン
インド出身のYouTuberジョティ・マルホトラがスパイ容疑で逮捕された(Facebookより)
スパイ容疑で逮捕の“インド人女スパイYouTuber”の正体「2年前にパキスタン諜報員と接触」「(犯行を)後悔はしていない」《緊張続くインド・パキスタン紛争》
NEWSポストセブン
ラウンドワンスタジアム千日前店で迷惑行為が発覚した(公式SNS、グラスの写真はイメージです/Xより)
「オェーッ!ペッペ!」30歳女性ライバーがグラスに放尿、嘔吐…ラウンドワンが「極めて悪質な迷惑行為」を報告も 女性ライバーは「汚いけど洗うからさ」逆ギレ狼藉
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
小室眞子さん第一子出産で浮上する、9月の悠仁さま「成年式」での里帰り 注目されるのは「高円宮家の三女・守谷絢子さんとの違い」
週刊ポスト
田中圭の“悪癖”に6年前から警告を発していた北川景子(時事通信フォト)
《永野芽郁との不倫報道で大打撃》北川景子が発していた田中圭への“警告メッセージ”、田中は「ガチのダメ出しじゃん」
週刊ポスト
夏の甲子園出場に向けて危機感を表明した大阪桐蔭・西谷浩一監督(産経ビジュアル)
大阪桐蔭「12年ぶりコールド負け」は“一強時代の終焉”か 西谷浩一監督が明かした「まだまだ力が足りない」という危機感 飛ばないバットへの対応の遅れ、スカウティングの不調も
NEWSポストセブン
TBS系連続ドラマ『キャスター』で共演していた2人(右・番組HPより)
《永野芽郁の二股疑惑報道》“嘘つかないで…”キム・ムジュンの意味深投稿に添付されていた一枚のワケあり写真「彼女の大好きなアニメキャラ」とファン指摘
NEWSポストセブン
逮捕された不動産投資会社「レーサム」創業者で元会長の田中剛容疑者
《無理やり口に…》レーサム元会長が開いた“薬物性接待パーティー”の中身、参加した国立女子大生への報酬は破格の「1日300万円」【違法薬物事件で逮捕】
週刊ポスト
2日間連続で同じブランドのイヤリングをお召しに(2025年5月20日・21日、撮影/JMPA)
《“完売”の人気ぶり》佳子さまが2日連続で着用された「5000円以下」美濃焼イヤリング  “眞子さんのセットアップ”と色を合わせる絶妙コーデも
NEWSポストセブン