警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団組長が実際に体験した騒音トラブルへの対処とその顛末について。
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友人が切実な声で「人を紹介してほしい」と電話してきた。聞けば、住んでいるマンションで、階上の住民の騒音に悩まされているという。相手は若いカップルで、部屋に仲間を呼んでは真夜中まで飲んで騒ぐのだという。友人には幼い子供がいて、深夜に響く大声や笑い声、ドタドタと歩き回る騒音に怯え、泣き出してしまうそうだ。
管理人室に何度も相談したが埒が明かず、他の部屋からのクレームもすべて無視。直接、注意しにいっても相手は聞く耳をもたない。ようやく手に入れたマイホームはまだ何十年とローンが残っている。買い替えはできないし、職場への通勤や子供の保育園を考えると引っ越すことも難しい。
「上のあいつらが引っ越してくるまでは平和だったんだが…」と彼の声は沈んでいく。
どんなに頼んでも注意しても、自分が悪いと相手が思わなければ騒音トラブルを解決するのは難しい。手立てがなくなった友人は、そこで目には目を、歯には歯を、モラルのない者にはヤクザをと考えた。
「もう疲れちゃって。その筋の人間を頼んで、注意しに行ってもらったら、あいつらもさすがに大人しくなるんじゃないか」という。ヤクザを頼みにしたくなる心情はよくわかる。騒音が続くと精神的に追い詰められてしまうのだ。
“ヤクザを使う”、昭和の時代ならそれも1つの手であったかもしれない。だが今の時代、暴力団対策法により反社会的勢力と承知している相手を利用したり、依頼する行為は禁止されている。無理だと理由を話すと、友人は「そうか…」と言って黙りこんだ。そこで彼にこう告げた。
「以前、同じマンションに住んでいた暴力団組長も、騒音トラブルの際に警察を呼んでいた。騒音が始まったら、躊躇せずに110番に電話して警察を呼んではどうだろうか」
ある指定暴力団・二次団体の組長は、階上の騒音に悩まされていた。階上には当時、両親と小学校低学年の子供2人の4人家族が住んでいた。その家では週末になる度に近所の子供たちが大勢集まり、”大運動会”が繰り広げられていたのだ。それはテレビの音すら聞こえなくなるほどの騒音だった。
子供たちが遊んでいるのだからと我慢すること1時間。だがその日、あまりのうるささに組長は管理人室に電話した。管理人が騒音を確認しに部屋までくると、「確かに音がします。足音ですかね。上にいって注意してきます」。しばらくすると静かになったが、10分も経たないうちに足音がまた響き始めた。組長はまた管理人室に電話すると「注意したんですが、言うことを聞かなくて…」。
その時は「親がいないから騒ぐのか」と思った組長だが、違っていた。親が周りの住人に配慮することなく、子供と一緒に相撲をしたり、踊ったりして騒いでいたのだ。そのため管理人がいくら注意しても、子供が静かになるわけがなかった。
そんなことを何度となく繰り返したある日、組長は直接、若い衆に注意に行かせた。出てきたのは30代ぐらいの父親だった。