9月7日16時──ARMYと呼ばれる、音楽グループ『BTS』の熱烈なファンたちが審判の時を待っていた。10月15日に韓国・釜山で開催されるライブのチケット当落発表だ。
今回のライブは2030年の釜山万博の招致を目的とした活動の一環で行われる。約8万人を収容できる「アジアドメインスタジアム」で開催され、驚くべきことにチケット代は無料だ。コロナ禍による渡航制限が緩和されたいま、世界中のファンが申し込み、プラチナチケット化した。
もっとも、争奪戦はライブ開催が発表された時点で始まっていた。
「開催を知って、即座に航空券とホテルを押さえました。当選発表に向けて日々、徳を積んでいました(笑い)」(40代のファン)
お隣の国といっても、飛行機代は決して安くない。ライブ開催日前後の釜山直行便は、週末であることに加え、最近の燃料費高騰のあおりをうけ、片道8万円を超えるものまであった。
さらに大狂乱なのはライブ会場近くのホテルだ。普段は日本円で1泊約6000円程度のビジネスホテルが、約80倍の50万円ほどにはね上がっているのだ。
「釜山市は観光協会などを通して、ホテルが不正な価格のつり上げをしないよう注意しています。しかし、法的拘束力はない。焼け石に水です」(韓国在住ライター)
予約が済んでいても安心はできない。
「ホテルから『予約が重複しているので宿泊できない』と連絡があり、抗議したんですが、聞き入れてもらえず。しばらくして、そのホテルの予約サイトを見たら、同じ部屋がゼロ1つ高い値段で空室扱いになっていました。高い宿泊代を取るために嘘をついたのなら絶対に許せません!」(30代のファン)
“野宿をする”と宣言するファンも出ているが、冗談では済まないかもしれない。
「どんな手を使っても参加する」と、転売チケットの購入を検討する人も見られるが、その価格は桁違いだ。転売が認められているアメリカ・ロサンゼルスで2021年に開催されたBTSのライブでは、約180万円で取引された。
高額転売が禁止されている韓国では、近年は厳しい本人確認がされている。2019年のソウルでのライブでは、会場に入れないファンが続出した。それでも、のぞみをかける人は後を絶たない。
「機械でチェックしているわけではないので、運がよければすり抜けられるという噂なんです。“闇チケット”に大金を払う覚悟はできています」(デビュー当時からのファン)