「盗撮の被害には何度も遭っていて、そのうち数回は警察を呼び、犯人が逮捕されたこともあります。盗撮って、下着だけではないんです。二の腕やうなじ、脇の下、太ももなど、いろんな所を盗撮される。エスカレーターや階段だけ気にしていれば良いというわけではなく、常に盗撮被害に遭う危険性がある」(森下さん)
4年前の夏、森下さんが電車に乗っていたところ、ノースリーブのトップスを着用していた森下さんの脇の下に、隣に座っていた中年男性がスマホを差し込み盗撮した。森下さん自身は全く気がつかなかったと言うが、対面にいた乗客の指摘により発覚。通報により駆けつけた警察は森下さんに、男はシャッターをきっても音が鳴らない無音のカメラアプリを使い、森下さんの脇や二の腕、横顔などを複数枚盗撮していたと説明。また、男のスマホからは他の女性を盗撮したと思われる写真や動画も見つかったという。
元々ファッションが大好きだった森下さんだが、こうした被害に幾度も遭う内に、警察や知人からは「あなたも悪い」「露出が多すぎる」とアドバイスされるようにもなったと肩を落とす。
「全裸や下着姿で私が歩いているのならまだしも、常識的な範囲内で涼しげな、好きな格好をしているだけ。ジロジロ凝視してきたり盗撮する方が悪いのに、なぜ私に原因があるような言い方をされなければならないのか。いろいろなショックが重なり、一時的でしたが、精神的に不安定になりました」(森下さん)
被害に遭ったときの精神的なダメージは、被害を受けたことのない我々には想像ができないほどに大きい。盗撮をされたショックに加え、警察からの詳細な聞き取りにも応じなければならず、時間も浪費するし消耗する。盗撮された写真がネット上に出回らないか、私のことを犯人が覚えていて仕返しされるのではないか、様々な懸念が森下さんの頭の中を駆け巡る。結局、もう二度とそういうつらい思いをしたくないから、真夏でも露出を控え、盗撮されないよう心がけているというのだ。
警察庁によれば、盗撮事犯の検挙件数は2011年時点で1930件、2019年には3953件、2021年には過去最多の5012件へと急増している。また検挙される盗撮犯の大多数がスマホのカメラを悪用しており、スマホ普及率ともぴったり比例しながら増加していることもうかがえる。
「めがね型やペン型の、いわゆる”隠しカメラ”だけではないんです。いつどこにいても盗撮される、そんな危険性を感じながら生活し続けるのは正直つらいです」