スポーツ

元騎手・蛯名正義氏が考察 ジョッキーの「気持ち」が馬に通じる時はあるのか

8番人気で勝ち、馬連が2万馬券となった2014年6月1日の最終レース目黒記念。この日は10レースのダービーが1番人気2着。11レースでも1番人気で7着だった(写真/JRA)

8番人気で勝ち、馬連が2万馬券となった2014年6月1日の最終レース目黒記念。この日は10レースのダービーが1番人気2着。11レースでも1番人気で7着だった(写真/JRA)

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、ジョッキーの気持ちと馬についてお届けする。

 * * *
 ここのところジョッキーのメンタルについてお話ししています。「気持ち」というと精神論みたいな印象があるかもしれないけれど、そういうことだけでもないんです。

 勝負事にはやはり「流れ」がある。1日に複数の騎乗依頼があるジョッキーは「流れ」を気にします。同じ日に同じコースで乗ることになれば、前のレースは外が伸びてやられたら、今度はそれを意識しようと思う。それは馬券を買う人も同じでしょう。

 ところが、悪いことってホントに続くのです。バタバタするとさらにおかしくなる。ダメな時は丹念に考えてシミュレーションして、レースで思った通りに前が空いたと思っても、その瞬間にサーっと別の馬に入ってこられたりする。前半スムーズに走っていても、なんか「嫌な予感」がしてそれが当たったりする。前の馬が斜行して前をカットされたり、馬が突然走る気をなくしたり……。100勝以上した年でも、2週間まったく勝てないなんていうことはありました。

 勝てない時は「ハマリが悪いな」と感じます。波が来るのを待つというか、引き寄せるというか、じっと我慢します。手ごたえがだんだんあやしくなってきて、あ、ここまでだなと感じたら焦って追ったりしないで、一つでも順位をあげるために内側に回ろうなどと考えます。負けてもタダじゃ転ばない、何か掴んで戻らないと。でも抜け出すのはなかなか難しいです。

 逆にうまくいく時は何も考えていなくてもここぞという時にコースが空く。前半何度もミスして後方に置かれてしまっても、結果的に脚がためられて、最後の直線でスッと大外に出せて末脚が生きたりすることがある。

 ジョッキーのバイオリズムを出している予想があるけれど、あながちハズレではない。勝負はツイてるやつに乗れっていうじゃないですか。午前中2つも勝つようなジョッキーがいたら、徹底的に乗るのも手です。そういうジョッキーはいわゆるゾーンに入っていて、1日に5勝も6勝もしたりすることがある。

 走るのは馬だけどジョッキーの気持ちが通じたのではないかと思うこともあります。人気馬に乗って負けると特に悔しいけれど、僕は次のレースで取り返そうと考えました。そのためには前の負けを引きずらないこと。全部よかれと思って乗るけれど、失敗するときもあるんだからしょうがない。すべて思う通りに乗れても勝てない時の方がずっと多いのだから、ならば切り替えることですね。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン