表現することは自由である。同時に心のケアも重要な問題になっている昨今である。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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いろんな意味で注目を集めているNHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」。今月30日で最終回を迎えます。9日には朝ドラに続いて放送されている「あさイチ」に、主演の黒島結菜と夫役の宮沢氷魚、主題歌を歌っている三浦大知がそろって出演。フィニッシュに向けて、ラストスパートの機運を盛り上げました。
ヒロインを応援しながらドラマを楽しんでいるファンも多いいっぽうで、それ以上に目立つのが日々バッシングに精を出す人たち。ドラマだけじゃなくてどんなことでも、文句がない人は黙っていますが、批判や反対の意見を持つ人は大きな声を張り上げがちです。
「ちむどんどん」が始まってひと月ほどしたころ、私もここで『賛否両論の朝ドラを「ちむどんどん」しながら堪能するコツ5』というコラムを書きました。twitter上に内容への批判が日々たくさん書き込まれる現状を踏まえつつ、自分自身も「ツッコミどころが多いドラマだな」と感じつつ、こういう見方をしてみてはと5つのコツを提案した次第です。
そのときにコツのひとつとして「twitterの『#ちむどんどん反省会』を読んで荒ぶった心を浄化する」という項目を入れました。たいへん申し訳ありません。前言を撤回します。初期はさておき、ここ数カ月の「#ちむどんどん反省会」は、読んで心が浄化されるどころか、ネガティブな感情に包まれて気持ちが沈むだけです。
twitter上に「#ちむどんどん反省会」というハッシュタグを定着させたのは、「ちむどんどん」の独特なパワーの成せる業。このハッシュタグは毎回ドラマの放送が終わった直後から大いに盛り上がり、しばしば「#ちむどんどん」をしのぐ勢いを見せます。ただ、ドラマが回を重ねるにつれ、漂ってくる負のオーラがどんどん増幅していきました。
私たちは「#ちむどんどん反省会」の歪んだ盛り上がりっぷりから、反面教師としての教訓をたくさん得ることができます。僭越ですが、せっせと書き込んでいる方々の膨大なエネルギーを少しでも有効に活用するために「『#ちむどんどん反省会』の反省会」を執り行うことにしましょう。会と言いながら参加者は私ひとりですけど。
●教訓その1「いったん『批判していい』というレッテルが貼られると、人はじつに楽しそうに悪口をぶつける」
常々言われているネットの特性でもあります。事件やスキャンダルが起きるたびに同じ光景が繰り返されてきました。twitterは大半のユーザーが匿名なので、悪口や批判の集中砲火がエスカレートしやすい傾向もあります。ドラマの悪口で訴えられる心配はまずないので、こんなにお手軽で安全なうっぷん晴らしの方法はありません。
悪口合戦においては「気の利いた悪口」をぶつけた人が、たくさんの尊敬と称賛(具体的にはtweetへの「いいね」など)を集めます。ハナから悪意を持って鑑賞しつつ「今日はどんな悪口を言ってやろうか」「あ、いいネタ見つけた」と思ったりするのは、さぞ楽しいことでしょう。どういう表情をしているのか、こっそり見てみたい気もしますが。