スポーツ

羽生結弦、プロ転向の背景に採点ルールへの不信感 ISUと全面衝突も辞さぬ覚悟か

採点のルール変更と闘ってきた羽生結弦(写真/共同通信社)

採点のルール変更と闘ってきた羽生結弦(写真/共同通信社)

「新たなスタートとして次のステージに向かいたい」──羽生結弦(27才)がプロ転向を宣言したその日、秘かに限られたメディアにだけ胸の内を明かしていた。それは、大組織との全面衝突を覚悟してまで伝えたかったことだった。

 時折天井を見つめ、ひと言ひと言噛み締めるように言葉を紡ぐ。

「『自分って必要とされていないのかな』『羽生結弦、早く引退しろと言われているのかな』と思った時期もあって……つらいこともありました」

 9月2日、テレビ東京のホームページに、羽生のインタビューが公開された。これは7月19日に行われた、プロスケーターへの転向会見の直後に収録されたもの。まるで「引退を強いられた」と語っているようにも取れる羽生の告白が、国内外で波紋を呼んでいる。これは“宣戦布告だ”という声まで出始めて──。

 羽生がインタビューで明かしたのは、採点への不満だった。あるフィギュアスケート関係者が語る。

「羽生選手の現役時代は、採点との闘いでもありました。彼に不利とされる採点のルール変更が何度かあり、“羽生いじめ”ではないかと指摘されたこともありました。テレビ東京のインタビューでは、採点システムに対して疑問を呈し、『点数でもらわなくてもいいやって正直思いました』とまで語っています。本人が言及したことで、『プロ転向の理由はこれだったのか』と考えるファンもいるほどです」

 フィギュアスケートの採点は大きく「技術点」と「演技構成点」の2つに分けられる。ジャンプやステップなどが前者で、表現力といわれるものが後者となる。演技構成点は(1)スケーティング技術(2)技と技のつなぎ(3)動作・身のこなし(4)振り付け・構成(5)音楽の解釈の5項目からなり、それぞれが10点満点で評価される。

 羽生は2015年に開催されたグランプリファイナルのショートプログラム(SP)で、演技構成点が49.14点(50点満点)と、ほぼ満点に近い高得点を獲得したことがある。しかし、この高得点が羽生の苦しみの始まりでもあった。演技構成点には上限があり、SPにおいてほぼ満点を取った羽生は、行き詰まりを感じていたという。

「自分の中では以前よりいい演技をしたのに『演技構成点』が前ほど上がらないことに困惑したといいます。一方の『技術点』は上限がなく、理論上では難しいジャンプを跳ぶほど加点される。2016年シーズン以降、羽生選手は4回転ジャンプに磨きをかけ、難易度を上げていきました。そして2018年の平昌五輪で連覇を果たした後、前人未到の4回転半ジャンプへの挑戦を宣言したのです」(前出・フィギュアスケート関係者)

 さらに高みを目指した羽生だったが、早速、壁にぶつかってしまう。採点ルールの変更だ。

「この頃、羽生選手以外にも4回転を跳ぶ選手が増え、高得点での争いになっていきました。本来、『演技構成点』と『技術点』は50対50が望ましいのですが、後者の方が高くなりすぎてしまったので、ジャンプの基礎点を下げるルール変更が行われたのです。4回転半も、きれいに成功しなければ点数の低い技になってしまいました」(前出・フィギュアスケート関係者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン