国内

老人ホームで失敗しない条件 「良い施設」と「悪い施設」を潜入比較【前編】

老人ホームで失敗しないために

老人ホーム選びで失敗しないために

「終わりよければすべてよし」ではないが、死に場所は自分で選び、理想の最期を迎えたい。そう思って「老人ホーム」への入居を決めたが、予期せぬ落とし穴にハマってしまう可能性がある。食事や医療体制、設備、スタッフの接し方など、施設によって雲泥の差が出るサービスについて、専門家と経験者たちが内部事情を明かす。【前後編の前編】

 * * *
 某地方都市在住の長田智美さん(仮名・62才)が悲痛な表情で話す。

「母が亡くなり、地方で独居になる父が不安だったので実家を売却、本人とあちこち見学した末に有料老人ホームに入居が決まりました。3か月ほど経ち、慣れてきた頃かなと思って電話してみたら、言いにくそうに“ここを出たい”と打ち明けられたんです」

 理由を尋ねると、父はぽつりぽつりと不満を訴え始めた。

「父はまだ元気なのに、スタッフから認知症の人と同じような赤ちゃん言葉を使われたり、ぞんざいな態度を取られたそう。食事は冷凍食品が多く、中が冷たいことも頻繁にあるとか。施設への不満が次から次へと飛び出し、止まりませんでした」

 一方、都内近郊のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居中の原田寿美さん(仮名・77才)はこう話す。

「タブレットのネット接続に戸惑ったとき、フロントに相談したらすぐ担当の人が来て、つなげてくれました。何よりうれしいのは、食事が日替わりで飽きのこない品数豊富なバイキングということ。しかも、“リンゴはすりおろしてほしい”などの希望にも応えてくれます。ここを終の棲家に決めて、本当によかった」

 それぞれ「終の棲家」として真剣に熟慮、選択した「老人ホーム」だったはず。それにもかかわらず、長田さんの父親と原田さんのように大きな差がつくことがある。その理由はいったいなんなのか──。

 そもそも、ひとくちに「老人ホーム」といっても公的・民間施設にまたがり、さまざまな種類がある。公的施設の主なものだけでも、要介護3以上が要件の「特別養護老人ホーム」、要介護1以上の「介護老人保健施設」、自立?軽度の要介護の「ケアハウス(軽費老人ホーム)」がある。

 民間施設にも要支援2以上の「グループホーム」、要支援1以上の「介護付有料老人ホーム」、自立?軽度の要介護の「住宅型有料老人ホーム」「サ高住」などがある。今回はこれらのジャンルをまたぐように集めた「底辺」と「最高級」の体験談から、失敗しない条件を探っていく。

人手が足りず食事が最後までできない

 まず気になるのは、病院との提携だ。高齢になれば複数の持病を持つ人も多く、健康上の不安があちこち出てくる。介護評論家の佐藤恒伯さんが解説する。

「週1回くらいのペースでやってくる医師に診てもらえるところが多い。さらにそこで出された処方箋により、訪問薬局が薬を届ける。そうしたルールになっているのはどこもほとんど同じです。ただ“最高級”の施設に入居している人が大病院をかかりつけ医にしている場合、送迎対応をしてもらえることもある。“底辺”の施設の場合は最低限の人員しかいないのでどうしてもそれは難しい」

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン