自民党が旧統一教会側と接点のある党所属国会議員の「点検結果」を公表した前日の9月7日、“本拠地”韓国では旧統一教会が全国紙に全面広告を展開していた。
〈世界平和統一家庭連合 声明文〉と題した意見広告では、韓国MBCの調査報道番組『PD手帳』(8月30日)で放送された「安倍元首相、銃撃犯、そして統一教会」の内容について〈明白な宗教弾圧であり、家庭連合に対する甚大な歪曲報道〉として旧統一教会の立場を明らかにするとしている。
在ソウルジャーナリストの柳錫氏が語る。
「この意見広告は韓国の新聞13紙に掲載されました。日本でいう朝日、読売のような伝統ある全国紙から、新興のところまで網羅していました。これほどの数の全面広告は韓国でも見たことがなく、費用も相当かかっているはず。声明文では献金は自発的なものだと強調していますが、そうしたお金がこの広告費に充てられている可能性も否定できない。この意見広告については私が見る限りでは韓国で報道もされていませんし、あまり話題にもなっていません」
声明文では『PD手帳』の放送についての反論だけでなく、安倍元首相への思いも綴られていた。
〈平和運動を推進しながらも不意の逝去を迎えた安倍晋三元首相に対して深い哀悼の意を表します。韓半島の統一と世界平和のビジョンを提示し、前・現職首脳と共にその志を明らかにした安倍元首相の崇高なる犠牲を家庭連合は絶対に忘れません〉(日本語訳)
柳氏はこう推測する。
「安倍元首相は旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを送ったこともあり、恩や助けを受けたということへの礼儀のようなものでしょう。声明文は教団内部の裁判や資産など、外部の人がほとんど知らない内容についても言及しているので、信者向けに内部結束させる目的があるのではないかと思います。安倍元首相を礼賛しているのは韓国人信者だけでなく、7000人ほどいるとされる、韓国人と結婚した日本人妻へのアピールもあるはずです」
死してもなお、旧統一教会の“広告塔”にされ続けるのだ。