動画配信サービスでは海外ドラマが話題になることが多いが、日本にも名作ドラマはたくさんある。そんな名作ドラマに「共通点がある」と、ドラマ好き芸人の「ニブンノゴ!」の宮地謙典(46才)は言う。
「いいドラマって見た次の日に、必ず語りたくなりますよね。次はこうなると考察したり、最終回をみんなで予想したり。いまでも、ドラマ好きの芸人同士で『あのセリフよかったな』などとマネしあっていますが、脚本家が練りに練ったセリフを、演者が魂を込めて演じているから、そのセリフをついマネしたくなる。そんな忘れられない名ゼリフが多いのも名作の特徴です」(宮地)
見る側の年齢や心境により見え方が変わり、何度も見返すことで新たな発見もある。3人のドラマフリークが、今こそ見るべき作品と名セリフを紹介する。
「そうだよ、女は言ったら負け」(母・竹沢ふじ)
『土曜ドラマ向田邦子シリーズ 阿修羅のごとく』第3話(1979年/NHK)
【あらすじ】
4姉妹の姿を通し、嫉妬、エゴ、執念といった『阿修羅』の一面を描く。長女は加藤治子さん(当時57才)、次女は八千草薫さん(当時48才)、三女はいしだあゆみ(当時31才)、四女は風吹ジュン(当時27才)が演じた。
【ココで見られる】
『阿修羅のごとく』DVD2枚組 6600円 NHKエンタープライズ倶楽部 (C)2003 NHK、NHKオンデマンド配信中。
コラムニスト・吉田潮さんが選んだのは、『阿修羅のごとく』第3話(1979年/NHK)だ。
「子供の頃、再放送で見た記憶があるのですが、音楽に使われるトルコ軍楽と文楽の人形から強烈な印象を受けました。ドラマは2部作で、寡黙な父の浮気と4姉妹がそれぞれ持つ問題に、焦点を当てています。
彼女たちを猜疑心が強く、争いを好み、悪口を言い合う、怒りの象徴である“阿修羅”に例えたところが秀逸です。
特に覚えているのが、母(大路三千緒さん・当時59才)が家の庭先で樽に白菜を漬けているシーン。長女と次女がそれを手伝っているのですが、長女が席を外した隙に、次女が、浮気をしている自分の夫について『(夫が)どこに誰といるか、薄々知っているの。でもね、私、黙っているの』と言い、それに対して母が『そうだよ、女はね、言ったら負け』と余裕の顔をして、白菜を漬けるところが印象的。ところが、当の母も夫に浮気されているから、本当は、余裕でもなんでもないんですね。
実は私、大人になってからこのドラマと同じような体験をしたんです。そのとき、『阿修羅のごとく』と同じだと思い、向田邦子さんの人の業を捉える力ってすごいなって思いました」(吉田さん)
【プロフィール】
吉田潮さん/テレビ番組、主にドラマに関するコラムやイラストを執筆。著書に『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)など。