またひとり、またひとりと、仲間だったはずの登場人物が消されていく異色の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。今回は大ファンだという女優の麻木久仁子、ものまねタレントの松村邦洋、コラムニストのペリー荻野の3氏が、“粛清シーン”の人間ドラマの魅力を大いに語った。【全3回の第3回。第1回から読む】
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ペリー:今後の粛清シーンで注目なのは、北条時政(坂東彌十郎)との対決がいよいよ間近に迫っている畠山重忠(中川大志)です。
松村:同じ三谷幸喜さんの大河ドラマ『新選組!』との対比で、重忠を堺雅人の演じた山南敬助になぞらえる声がけっこう多いんです。山南は筋の通った好人物で、土方歳三の強引なやり方に反発して脱走し、最期は切腹する。
中川さんは三谷さんに「山南のビデオをよく見ておいてくれ」と言われてたんじゃないですかね。彼の目の動きは、堺さんが「悔やむことはない」と言った時のモノマネです。僕にはわかる。
麻木:アハハ、なるほどね(笑)。
松村:重忠は「なるほど」っていうセリフが多いんですよ。三浦義村(山本耕史)が何か言うと、「なるほど、さすが三浦殿」とか。だけど、今度ばかりはなるほどとは言わない。時政に自分の領地を奪われるから。そこにいかにも坂東武者という気概が見えますよね。
麻木:重忠は頼朝に「見映えがいい」と言われ続けて、ビジュアル押しの場面も多いから、粛清シーンにはカッコいい殺陣がガッツリ組んであるんじゃないかしら。
ペリー:でも、そうした予想をことごとく裏切ってきているのが『鎌倉殿』ですよね。視聴者を裏切って、常に「なるほど、こっちのほうが面白い」と思わせる。
私は重忠には卑怯な手でカッコ悪く殺されてほしいんです。すると北条家の反対を無視して重忠を手掛けた時政に対して、「それはないだろう」と他の御家人からの反感が強くなり、後の時政追放につながるので。
麻木:確かにそうじゃなきゃ、義時が親を追放するところには行けないものね。私はやっぱり権力闘争には向いてない(笑)。
松村:夫・時政に重忠討ちを唆すりく(宮沢りえ)も、前半部分では意外に悪く描かれていなかったでしょう。でもそのうちすれ違っていく。政子(小池栄子)や義時が継母のりくと合わないのは仕方がないですよ。
ペリー:都に縁のある人と坂東の人の感覚の違いというのは、チラチラっと織り込まれていますね。りくも、ずっと都を見ているようなところがあって。だから、大事な息子・政範(中川翼)を都に出したんだと思う。都で政範が急死した時に、重忠が怪しいとりくに讒言するのが、京から下ってきた娘婿の平賀朝雅(山中崇)。都の人は徹底してむちゃくちゃ感じが悪いですよ(笑)。
麻木:政子は北条家で唯一、ダークサイドに落ちていない感じですけど、この先はどうなるんでしょう。
松村:政子はいい人としてあり続けて、後鳥羽上皇(尾上松也)と激突する承久の乱の時に、スピーチで幕府を救うんですよ。その「練習」シーンも、三谷さんは用意するんじゃないかな。政子が「朝廷側につきたい方は、どうぞついていただいて結構です」と言うと、義村が「そのような者はここにはおりません」と立ち上がる、そのタイミングも稽古を重ねるんじゃないかな。
麻木:政子にはスピーチのところまで“無罪”でいてもらわないと、一致団結できないものね。