日本でもNetflixオリジナルやAmazonプライムオリジナルでドラマや映画が制作されるようになれば、世界で通用するリッチなコンテンツを制作できるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていたクリエイターたち、制作に直接携わる人たちの一部は、またしても横行する「中抜き」に諦めの感情を抱きつつある。俳人で著作家の日野百草氏が、必要なところに制作費が届かない日本の実情を映像制作会社のプロデューサーに聞いた。
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「まさかここまで腐っているとは思いませんでしたが、VODのオリジナルドラマも金がきちんと現場に降りてきません。いくら配信本体が大金をつぎ込んでも誰かが抜いていく、日本のエンタメは本当に重症だと思います」
映像制作会社のプロデューサーからこの話を聞いたのは2021年末、世界的なアメリカ発のVOD(ビデオ・オン・デマンド)企業が日本を席巻する中での話だった。
VODとは一般的な説明をするなら「定額契約(サブスクリプション、以下サブスク)でドラマやアニメを視聴できる動画配信サービスのことである。こんな説明より、Netflix(ネットフリックス)、Amazonプライムビデオ(俗にアマプラ)、と言ったほうが早いか。国内企業もあるが、とくにこの2社はオリジナルドラマの制作に力を入れていて、たとえばネットフリックスのコンテンツ製作予算は約170億ドル(2021年度)と、日本のエンタメとはお話にならないほどに膨大である。
「期待していました。彼らは実際に巨額の制作費を出してくれる。日本のテレビ業界や映画界は中抜きまみれですから、海外企業という『黒船』なら日本の寄生虫のような連中も手を出せないだろう、そう期待したのですが」
ここで言う「中抜き」とは本来の意味である仲介業者を省き直接取引をするといった効率化の意味ではなく、俗にいう過度の中間搾取、要するに「ピンハネ」の意味である。誤用から生まれたスラングだがすっかり定着してしまった。本稿も便宜上「中抜き」とする。
「たとえば、VOD企業が巨額の制作費を出したある日本のドラマは、その金額ほどに現場へ金が下りて来なかったのです。実際、鳴り物入りのはずがチープでお粗末なドラマでした」
VODは先に挙げた世界的企業の他にも国内外に多数ある。どの企業の案件かは書かないが、あるオリジナルドラマはその総製作費に比して、現場には制作費がまわってこなかったと語る。それも珍しくはないと。
「これは私の関わった作品ではありませんが、ある大ヒット作品の続編すらそうだと聞きました。オリジナルドラマとして大ヒットして続編が決まった途端、嗅ぎつけた連中が間に入ってくるのです」
この件、筆者も別の制作会社のディレクターから同様の話を聞いていて「何やってもピンハネする奴がいる」と苦笑していた。