大相撲9月場所が開催されているが、両国国技館の様子はコロナ前とは大きく変わった。今場所は座席での軽食は可能だが、会場内での飲酒は1本(1杯)までといった制限もある。もともと正面入り口の木戸番(モギリ)は元関脇・寺尾の錣山親方や元小結・旭豊の立浪親方といったかつての人気力士の役回りで、来場者はお目当ての親方のところに並ぶものだったが、今は協会から派遣された担当者が機械的にチケットの半券を切り取っているだけ。
館内でも親方衆が警備のためにウロウロしていたが、今は事務スタッフが「マスクの着用をお願いします」のプラカードを持って歩いている姿ばかり。そうしたなかで“孤軍奮闘”で気を吐いているのが、元横綱・大乃国の芝田山親方だ。
『全国スイーツ巡業』の著書などがある相撲協会総合企画部長の芝田山親方がプロデュースした商品を販売する「スイーツ親方の店」が大盛況なのだ。昨年5月場所に際してオープンした店だが、今場所も来場客が館内に入って最初にスマホを取り出して写真に収めようとするのは、1階正面西側通路にあるこの売り場であることが多い。協会関係者が言う。
「コロナ感染拡大の影響で入場者が制限され、館内飲食もできなくなっていた。そうしたなかで当時広報部にいた高崎親方(元幕内・金開山)の発案で、芝田山親方ブランドの『スイーツパン』を販売が始まったのです。芝田山親方も売り場に顔を出し、平日は180個、土日は300個の限定販売をしたところ、連日完売という大人気企画となった」
当初はスイーツパン(メープル味、小豆味の2種類)、横綱食パン、北サブレの4種類の販売だったが、昨年9月場所にはマカロン、力士かまぼこ、焼き芋が品目に加えられた。その後も商品は増え続け、今場所はスイーツパン抹茶味、スイーツ親方の白星小餅など10種類以上を数える。
店舗は午前11時からオープン。午後3時頃には芝田山親方が売り場に現われ、スイーツパンと横綱食パンが売り切れるまで店頭に立っているという。相撲担当記者はこう言う。
「昨年5月場所にオープンした直後は照れくさそうにレジ横に座っているだけだったが、最近はエプロンをつけて積極的に販売に力を入れていますよ。芝田山親方が店頭に立つと黒山の人だかりとなり、1時間ほどでスイーツパンと横綱食パンは売り切れます」