認知症で患者数が多いのはアルツハイマー型認知症だ。現在は進行を遅らせる薬の登場に加え、患者が発病前に行なっていた習慣を継続したり、家族や周囲がコミュニケーションをとることで、軽症期間の延長が可能になるとの報告も。なにより脳トレや朝の散歩などは患者が自主的に取り組まなければ予防には繋がらないという。そこで最新の認知症治療のアプローチを紹介する。
認知症は脳の病気や障害などで認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす病気だ。
65歳以上の認知症患者は約600万人(2020年厚労省発表)と推計され、2025年には高齢者の5人に1人、約700万人が認知症になると予測されている。
認知症は『アルツハイマー型認知症』『血管性認知症』『レビー小体型認知症』『前頭側頭型認知症』があり、アルツハイマー型認知症患者が最も多い。しかし、物忘れなどは老化でも起こるため、それが老化か病的かの判断がつかず、家族はいつの段階で病院を受診させるべきかで迷う。
東京慈恵会医科大学附属病院・精神神経科の繁田雅弘教授に聞く。
「医学的な判断では、できるだけ初期の僅かな症状が出た段階で受診し、診断の結果により治療を開始するのがベストなのですが、大事なのは家族の心配をご本人に伝え、本人自らが受診しようと決心すること。本人が病院での治療行為を受け入れていないと薬を止めてしまうなど、せっかくの治療が失敗します」
1990年代になり、アルツハイマー型認知症治療薬としてコリンエステラーゼ阻害剤が発売された。学習や記憶において重要な働きをするアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑え、アルツハイマー型認知症で低下しているアセチルコリンの不足を軽減し、進行を遅らせる薬だ。他にも向精神薬などを処方する。