海・山・温泉が近いこの土地からは、院長の飯塚さんも大きな癒しを得ている
「何をしても治らなかった十年来の頭痛が消えた」「性格だと思っていた子供の頃からの暗い気持ちがなくなった」。その病院で治療を受けた人たちは口々に自分の体に大きな変化が起きたと話す。全国から患者が殺到するクリニックのメソッドを紹介する。
鳥取県・米子空港から海沿いの道を20分ほど車で走ると、山陰地方を代表する皆生温泉の温泉街が目に入る。美しい白砂青松の海岸線をバックにレトロな旅館やホテルが立ち並び、海の向こうには名峰・大山がくっきりと姿を現す。
そんな自然豊かな環境に、全国から患者がこぞってやって来る、医師が1人の小さなクリニックがある。
「東京の名医にかかっても改善しなかったうつ状態が1週間で治った」「カッとなりやすく、周囲に吐いてしまっていた暴言が翌日から治まった」──そんな“奇跡”ともいうべき治療を施すのが、メディカルストレスケア飯塚クリニック院長で精神科専門医の飯塚浩さん。
広々としたクリニックの待合室に、ログハウス風の高い天井。リラックスできる空間が広がっている。
「当クリニックには、1年でのべ1万6000人の患者さんが訪れます。症状として最も多いのはうつ病ですが、メンタルの問題だけでなく、頭痛やだるさなど総合的な不調を訴える人も数多くいます」(飯塚さん・以下同)
子供から高齢者まで幅広い年代の患者が訪れるが、最も多いのは40~50代の女性だ。
「この世代の女性は子育てや家事に親の介護まで加わって多忙かつ、ストレスもたまりやすい。更年期にさしかかり、体力も落ちてくるため、日常生活を送っているだけのつもりでも、無意識に無理を重ねているケースが少なくない。本人も意識しないままに、さまざまな不調が表に出てきやすくなります」
実際、別の病院に10年以上通っても治らなかった片頭痛が、飯塚さんの診察を受けて1週間で治った例もある。
「当クリニックでは投薬治療も行いますが、不調を根本から改善するには食事や生活習慣の見直しが不可欠だと考えて、治療に取り組んでいます。
たとえば、自然に触れることも治療の1つ。患者さんには、食事療法や薬の服用とともに米子の海を見たり、近くの温泉に入ったりして“休む練習”をすることをすすめています」
飯塚さん自身、自然あふれる鳥取の地に暮らすことで、日々癒されている。
「開業して20年が経ちますが、山も海も近くて、いつでもリラックスできる鳥取はとても気に入っています」
出身は新潟県。鳥取大学医学部を卒業後、東京の病院で働いたこともあったが、「自然の多い土地でゆっくり過ごしたい」という家族の希望で、大学時代を過ごした鳥取で開業することを決めた。
「口コミで情報が広がり、全国から問い合わせをいただいていますが、最近はあまりに遠方の患者さんはお断りすることも多いのです。断腸の思いですが、一人ひとりの患者さんと向き合いたいと思うと、どうしても時間が足りなくなってしまって……」
1万6000人がすがる奇跡の治療法の秘密を探ってみよう。