ビジネス

50億円詐欺被害のオウケイウェイヴ前社長を直撃 民事と刑事で起こした訴訟の行方は

オウケイウェイブ前社長の福田道夫氏

オウケイウェイヴ前社長の福田道夫氏

 上場企業が舞台となった詐欺事件は混迷の度を深めている。ジャーナリスト・伊藤博敏氏がレポートする。

 * * *
 名証ネクストに上場するオウケイウェイヴの“騒動”が治まらない。

 今年8月末の臨時株主総会で解任された前経営陣が、9月21日、総会決議の取り消しを求めて東京地裁に提訴。同時に、現経営陣の職務執行を停止する仮処分を申し立てた。

 混乱のきっかけは投資の失敗だった。

 インド人金融業者のスニール・ジー・サドワニ氏の“甘言”に乗って「IPO(新規公開株)の特別枠」に約50億円を投資したところ、入金された資金を他の投資家の利払いに回す「ポンジスキーム」という詐欺だったことが発覚した。

 筆者は、オウケイウェイヴの依頼を受けた調査委員会が、6月10日、調査報告書を提出したのを機に、本サイトで「50億円詐欺事件の全貌」と題する記事を執筆した。

 会社側は、報告書に合わせて警視庁に告訴状を提出して受理されており、捜査は始まっている。また、2度にわたる調査委員会の報告書で、役員らがスニール氏と組んだ形跡はなく、善管注意義務違反を問われそうな役員はいるものの、会社は被害者と位置付けられた。

 ただ経営陣の責任を追及する株主もいて、杉浦元氏らが臨時株主総会の招集を請求した。これを受けて会社側は、8月25日に株主総会を開いた。その結果、代表取締役の福田道夫氏と取締役の野崎正徳氏は解任され、新たな代表取締役には杉浦氏が就き、他に4名の取締役が選任された。

仕掛けた相手はかつての“仲間”だった

 オウケイウェイヴは日本最大級のQ&Aサイトを運営する会社。フィンテック事業に進出して株価も高騰したが、前社長のインサイダー疑惑などの不祥事もあり、軌道を修正してメインのソリューション事業を約71億円で売却、2021年6月期決算で約60億円の特別利益を計上した。

 この手元資金を遊ばせておくわけにはいかないと、福田氏が経営管理本部長の野崎氏に指示して、スニール氏の会社であるRaging Bullへの投資を検討させた。まず3億4000万円の投資が2021年4月6日の取締役会で承認され、1億5000万円の利益がもたらされた。以降、発覚までの約1年間に34億2900万円を運用委託、受領した利益分の15億300万円と合わせ、49億3300万円が取立不能となった。

 投資失敗の責任を取らされての福田、野崎両氏の解任だが、そう仕掛けた杉浦氏はかつての“仲間”だった。

 福田前社長は、慶応大学を卒業後、大手通信会社を経てベンチャーの世界に飛び込み、2000年4月、創業したばかりのオウケイウェイヴに入社した。一方、杉浦氏は早稲田大学を卒業後、大手証券系投資会社でベンチャー投資業務を行い、その過程の2000年2月、オウケイウェイヴ取締役に就任、8年間、役員を務めている。

 ネット社会にQ&Aサイトを定着させようと手を組んだ2人が、20年余を経て争うことになったわけだが、福田氏が復帰を画策するのはなぜか。そもそもの原因である50億円詐欺事件の行方はどうなるのか。

 会社を提訴したばかりの福田氏を直撃、その真意を聞いた。

――50億円詐欺事件の結果責任を問う声があるなか、復帰を画策するのはなぜか。

福田:もともと会社に居座ろうという気はありませんでした。経営を安定させ、見通しが立ったら野崎とともに辞めるつもりでした。ただ、プロキシーファイト(委任状争奪戦)の過程で、我々が事件に関与しているような情報を流され、それが敗因にもなった。それは認められないという気持ちです。

――具体的にはどんな攻撃か。

福田:杉浦氏は、8月4日に〈オンライン説明会開催についてのお知らせ〉というページをネットに公開、株主に対する情報提供を行いました。その際、例えば「オウケイウェイヴの取締役らがRaging Bull社を通じて会社資金を実質的に横領したとも捉えられかねない事態」などと記載、野崎とRaging Bullに矢印を引き、「資金流入疑惑」と記載していました。ほかにも「現経営陣において、不正の可能性を疑われてもやむを得ない」と記すなど、悪質な印象操作を行っています。

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン