戦地を免れ、命からがら辿り着いた地から、また逃げ出すことになるとは。日本に避難したウクライナ人女性と、身元保証人男性とのトラブルが続発、避難先を離れざるを得なくなる事例が相次いでいるという。ノンフィクションライター・水谷竹秀氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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ウクライナから国外へ避難した人数は9月13日時点で約1270万人、帰国した避難民は約575万人に上る。ウクライナでは18~60歳の男性の出国が禁じられているため、避難民の多くは女性や子供たちで、隣国のポーランドをはじめとする欧州で暮らしている。こうした女性たちの中には、避難先の男性と出会い、「禁断の恋」に陥る者も少なくない。キーウ在住の日本語通訳者、リュバさん(29)がこんな実情を明かす。
「ドイツに避難した私の友人の親戚は、浮気をしてしまいました。しかも一緒に連れている子供の面倒を他人に任せて男性と会っているようで、困ったと言っていました。そういう話はよく聞きます」
来日した避難民1882人のうち、女性は75%の約1400人と大半を占める。若い世代も多く、日本で頼れる身元保証人が男性であれば、恋愛関係に発展しても決して不思議ではないだろう。オレーナさんも来日してから1か月半が経過した頃、高田さんと恋仲になった。
「彼の方から誘って来たので、そういう関係になりました。私も好意を寄せていました。それからは一緒の部屋で寝ていました。近くには彼しかいないし、誰かに守って欲しかった」
以来、高田さんが優しくなったという。
「ただ、彼は人前では、私との交際を隠していました。自分は先生だから、真面目に振る舞わなきゃいけない、日本はそういうところなんだと」
ところが関係は長くは続かなかった。オレーナさんがある日、高田さんのスマホのメールを覗くと、別の女性と交換していたメッセージにキスマークが添えられていたという。問い詰めると、言い争いになった。以来、喧嘩を繰り返し、高田さんとの同棲が嫌になって隣の女性宅へ移った。
このままここで生きていくべきか。自問した結果、ウクライナへ戻ることを決めた。帰りのチケット、そして基金からの支援金10万円を受け取り、オレーナさんは帰国の途に着いた。
「ウクライナを支援しますと言いながら、こんなにひどい人だとは思わなかった。彼は偽善者です」
これに対し高田さんは、こう反論する。
「共通の知人からオレーナさんを受け入れて欲しいと頼まれたから受け入れました。同じ家に住むのも、全く問題ないと。取材に関しては、彼女が嫌だと言ったのは断っていました。地域の人たちで協力して彼女の面倒を色々見たのに……。彼女のころころ変わる言動には我々も振り回されました」