人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、アタマジラミについてお届けする。
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近年、学校現場(特に中学・高校)で“新型水虫”という言葉を耳にします。
医学用語ではありませんが、そのような名前で呼ばれている皮膚真菌症の頭部白癬(しらくも)や体部白癬(たむし・ぜにたむし)の集団発生が報告されるようになっています。学生さんが感染すると、家庭などで家族や周囲の人にこの新型水虫を拡げることになりますから、決して他人事ではありませんね。
原因のトリコフィトン・トンズランス菌は白癬菌の一種で、おそらくレスリングや柔道などの国際試合で海外から入ってきたと考えられています。2000年頃から国際交流のある格闘技選手らの中で目立ち始めました。今は一般の人にも拡がって、国内に数万人の感染者がいるとみられています。
従来の水虫とは異なり、頭部や首筋など上半身を中心に発症します。トンズランスの語源はキリスト教の修道士が頭頂部を丸く剃る“トンスラ”で、この新型白癬菌の感染がひどくなると頭頂部が禿げることがあることからつけられました。
そもそも白癬菌は、ヒトの皮膚の角質層・毛・爪などの蛋白質を食べて寄生します。トリコフィトン・トンズランス菌の症状は、初期の頃はあまり目立たずに進行して、体部白癬では首・顔・上半身に小豆大から爪大に角質が剥がれてピンク色の発疹ができ、その後、赤く輪を書いたような環状の発疹になります。早期治療が大切で、皮膚科医で処方された塗薬での治療になります。
頭部白癬は、カサブタができる程度から、頭皮が盛り上がって膿が出て、脱毛するような症状まであります。症状がなくとも毛穴に入り、周囲の人に感染させてしまうこともあります。皮膚科医師から処方された飲み薬での治療になりますが、菌が少量であれば専用の薬用シャンプーで対応できる場合もあります。しかし、この白癬菌は毛髪や皮膚に入り込むとなかなか駆除できず、根気強く治療を続けることが大切になります。