日本アニメの黎明期を支えたタツノコプロが今年、創立60周年を迎える。タツノコアニメに命を吹き込んだ、声優・歌手・スタッフたちの話から当時の制作舞台裏の様子を振り返る──。
タツノコプロの創業者・吉田竜夫さんを父に持つのが、キャラクターデザイナーの吉田すずかさんだ。竜夫さんの思い出をこう振り返る。
「私は小さい頃からパパっ子でした。いつも仕事場に行っては父の机の下に潜り、そこで絵を描いていました」
竜夫さん自身も、すずかさんの絵が大好きでいつも、
「すずかの絵がいちばん好き」
と、ほめてくれたという。すずかさんは、学校の机にもびっしりと落書きをしていたのだが、授業参観に来た竜夫さんはそれを見ても怒ることなく、
「よし!」
と言ってくれたという。
「子供の好きなことを最大限に肯定してくれる父でしたね(笑い)。
私が描いた絵を、キャラクターの参考にもしてくれました。夜中に寝ているのを起こされて、ラフスケッチを見せられ、“これとこれ、どっちがいい?”とか“髪形はどれがいい?”なんて聞かれたことも……。幼いながら、父の役に立てるのがうれしかったです」
家族を愛する子煩悩な父だからこそ、世界中の子供たちに夢を与えるような作品を多く作れたのだろう。ちなみに、『けろっこデメタン』に登場するキャラクターは、すずかさんの落書きがもとになっているという。
「仕事仲間も家族のように大切にしていて、自宅にはタツノコプロのスタッフや、『いなかっぺ大将』で主人公の風大左ェ門を演じた野沢雅子さん、『昆虫物語みなしごハッチ』の主人公、ハッチ役の栗葉子さんなど、声優さんたちも集まって、しょっちゅう餅つきやバーベキューをしていました。アニメスタッフは皆、固い絆で結ばれた家族のようでした」