ライフ

画家・玉井力三の世界 学年誌の表紙画の進化と輝いていた昭和の時代に壇蜜も感嘆

美術史家で明治学院大学教授の山下裕二さんと壇蜜さんが、玉井力三の世界について語り合う(撮影/太田真三)

美術史家で明治学院大学教授の山下裕二さんと壇蜜さんが、玉井力三の世界について語り合う(撮影/太田真三)

 世界でも類がない日本独自の出版文化である学年別学習雑誌「学年誌」が誕生して100年を迎えた。その学年誌の表紙画を約20年手がけたのが洋画家・玉井力三だ。美術史家で明治学院大学教授の山下裕二さんと壇蜜さんという世代の違う2人が、それぞれの思い出を胸に語り合った。

 * * *
「学年誌100年と玉井力三」展の会場には、玉井力三が手がけた学年別学習雑誌「学年誌」表紙絵の原画が249枚(描き直しの絵を含めると250枚)展示されている

山下:う~ん、懐かしい! 学年誌の表紙を飾ったこの絵は、小学生時代の幸福な想い出と結びついて今もはっきり記憶に残っています。

壇蜜:私が『小学一年生』を読む時代には表紙が写真になっていました。でも保育園で昔の『よいこ』を見たことがあって、この絵のタッチには見覚えがあります。

山下:画家の名は玉井力三。小学館の学年誌の表紙絵を約20年にもわたって描き続けました。今年は小学館の学年誌が創刊100周年を迎え、その歩みを振り返る「学年誌100年と玉井力三」展が千代田区立日比谷図書文化館で開かれています。

壇蜜:玉井さんの絵が初めて小学館の学年誌に登場した1954年の『小学二年生』の表紙はレトロですねぇ。

山下:男子は坊ちゃん刈りでね。ぼくも含め、昔は揃ってこの髪型だったんです。

壇蜜:女子は髪に大きなリボンをしていて。男子も女子も身なりがとてもいい。表紙から察するに、こういう格好ができる良家の子女の読み物だったのでしょうね。

山下:まだみんな貧しかった時代でしたからね。それが高度経済成長に伴い、1960年代頃から買ってもらえる子が増えた。まさにぼくの小学生時代。1年生の1964年には東京五輪があって、表紙でも日本代表団のブレザーを着ています。ちょうど目の前にその年の『小学二年生』5月号の表紙がありますよ。

壇蜜:あれっ、長嶋さん!?

山下:そうです、長嶋茂雄さん。子供と並んだ3ショットが描かれている。実は半世紀を超える表紙絵の歴史で有名人が描かれたのは長嶋さんだけ。それだけ巨人の人気が絶大だったし、この1枚だけというのが象徴的です。

壇蜜:高度経済成長期の「巨人大鵬卵焼き」ですね。この頃は巨人の帽子の男子がよく描かれていて、子供たちの服装も身近になりました。

山下:そう、表紙絵は時代を映す貴重な風俗画なんですよ。ぼくは表紙の子供の笑顔に少年時代が蘇ります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
日本一奪還に必要な補強?それともかつての“欲しい欲しい病”の再発?(時事通信フォト)
《FA大型補強に向け札束攻勢》阿部・巨人の“FA欲しい欲しい病”再発を懸念するOBたち「若い芽を摘む」「ビジョンが見えない」
週刊ポスト
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
ボランティア女性の服装について話した田淵氏(左、右は女性のXより引用)
《“半ケツビラ配り”で話題》「いればいるほど得だからね~」選挙運動員に時給1500円約束 公職選挙法で逮捕された医師らが若い女性スタッフに行なっていた“呆れた指導”
NEWSポストセブン
傷害致死容疑などで逮捕された川村葉音容疑者(20)、八木原亜麻容疑者(20)、(インスタグラムより)
【北海道大学生殺害】交際相手の女子大生を知る人物は「周りの人がいなかったらここまでなってない…」“みんなから尊敬されていた”被害者を悼む声
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
チャンネル登録者数が200万人の人気YouTuber【素潜り漁師】マサル
《チャンネル登録者数200万人》YouTuber素潜り漁師マサル、暴行事件受けて知人女性とトラブル「実名と写真を公開」「反社とのつながりを喧伝」
NEWSポストセブン
白鵬(右)の引退試合にも登場した甥のムンフイデレ(時事通信フォト)
元横綱・白鵬の宮城野親方 弟子のいじめ問題での部屋閉鎖が長引き“期待の甥っ子”ら新弟子候補たちは入門できず宙ぶらりん状態
週刊ポスト
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン
自身のInstagramで離婚を発表した菊川怜
《離婚で好感度ダウンは過去のこと》資産400億円実業家と離婚の菊川怜もバラエティーで脚光浴びるのは確実か ママタレが離婚後も活躍する条件は「経済力と学歴」 
NEWSポストセブン
被告人質問を受けた須藤被告
《タワマンに引越し、ハーレーダビッドソンを購入》須藤早貴被告が“7000万円の役員報酬”で送った浪費生活【紀州のドン・ファン公判】
NEWSポストセブン