《養生の術をまなんで、よくわが身をたもつべし。是人生第一の大事なり。》
江戸時代に活躍した儒学者・貝原益軒が書き残した『養生訓』は、普段の生活において実践できる具体的な健康法が紹介されている、当時の大ベストセラーだ。300年の昔から現代まで、日本人の健康意識の高さは、もう国民性と言っていいかもしれない。“体にいい”とされる食事法や運動法、睡眠術はいつの時代も大きな話題を集め、熱心に実践する人も多かった。
しかしその中のいくつかは、最新の科学や医学的根拠によって否定されている。当初は体にいいとされていても、その後、長年の研究結果や新発見によって覆されるケースも多いのだ。医学と健康のエキスパートたちの助言をもとに、「時代遅れの知識」をアップデートしよう。
多くの識者たちが“時代遅れ”と声を揃えたのが、「フルーツはヘルシー」という認識だ。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが指摘する。
「フルーツが含有する果糖は、ブドウ糖などほかの糖質と比較して、中性脂肪に変換されやすく、メタボや肥満を促進します。食べすぎには充分に注意してほしい。1日80kcal程度、おおよそ200gが目安です。りんごならば半分、バナナであれば1本分が該当します。それ以上は食べすぎかもしれません」
ボストン在住の内科医、大西睦子さんが懸念するのはフルーツジュースを飲む習慣。
「加工されたジュースは食物繊維や抗酸化物質を含まないうえ、液体なので体内に吸収されやすく、血糖値の急激な上昇リスクがあります。実際、ハーバード公衆衛生大学院の研究で、フルーツジュースを毎日1杯以上飲む人は、糖尿病のリスクが高まると指摘されています」(大西さん)
よかれと思って選んだ食品がかえって健康を損なうケースはほかにもある。
「代表格が春雨と薄口しょうゆです。春雨は中華麺やうどんに比べてカロリーは半分近いものの、糖質量は大きく変わりません。低カロリーだからといって麺類と置き換えて大量に食べれば血糖値が急上昇し、生活習慣病リスクが上がります。薄口しょうゆは、濃口よりも塩分量が少ないと誤解されがちですが、実際は逆。いずれにせよ、しょうゆの使いすぎは塩分の過剰摂取につながります」(望月さん・以下同)
二日酔い対策に重宝され、漢方やサプリメントとして大人気のウコンも、最新の研究では肝臓への悪影響が明らかになっている。