国際情報

【対談】佐藤優×片山杜秀「ウクライナは西側諸国と同じ価値観」というメディア主張は無理筋

慶應大学法学部教授の片山杜秀氏がウクライナについて分析

慶應大学法学部教授の片山杜秀氏がウクライナについて分析

 ロシアによるウクライナ侵攻のニュースが連日、紙面を賑わせているが、欧米発のストーリーに日本人が相乗りすることに危険がある。新書『危機の読書』を上梓した作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、慶應大学法学部教授の片山杜秀氏とともにウクライナ問題の本質を語りあう。【全4回の第2回。第1回から読む】

 * * *
片山:ウクライナ危機では、すべてのメディアが、ウクライナは西側諸国と価値観が一緒だから、日本も足並みを揃えよう、支援しようと主張した。しかし価値観が一緒というのは無理筋でしょう?

佐藤:おっしゃる通りです。ウクライナの歴史観ひとつ取ってもそう。いま広まっているウクライナの歴史は、実証的な歴史学には耐えられない、ガリツィア地方の民族主義者の主張をもとにしたウクライナ版の皇国史観とも呼べる代物です。

片山:ソ連崩壊後の30年間、ウクライナは政党政治もままならず、大統領の独裁体制のような形で国を動かしてきた。そして2014年に親ロシア派の大統領を追放したマイダン革命が起きた。以降、ロシア帝国時代から存在したウクライナ神話(皇国史観)を利用して、民族主義、ナショナリズムを煽ってきた背景があります。でも解説者は、そこには触れませんね。

佐藤:たぶん知らないのだと思います。ウクライナについての研究書や専門書もほとんどありませんから。専門家やコメンテーターは、ウクライナ版皇国史観をもとに話をするから、妙な方向に向かってしまう。ウクライナが抱える問題を理解するには『国民の僕』を見た方がずっといい。

片山:ゼレンスキー大統領がコメディアン時代に主演したドラマですね。見なければ、と思っていたのですが……。

佐藤:劇中で、2049年のウクライナは、ヨーロッパの最先進国に変貌しています。大学で、30年前の自国を振り返る授業をするシーンからドラマがスタートします。なかでも重要なのはシーズン3。ウクライナが28か国に分裂してしまう。そこに、大統領に扮したゼレンスキーが登場して、ウクライナが救われる。

片山:現実を予見したようなストーリーですね。

佐藤:『国民の僕』では最後の最後までドンバス地方とガリツィア地方だけは一緒にならずに対立を続ける。いまのウクライナも、国が分解してしまうという、この恐怖感に支配されている。

関連記事

トピックス

イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
マンションの周囲や敷地内にスマホを見ながら立っている女性が増えた(写真提供/イメージマート)
《高級タワマンがパパ活の現場に》元住民が嘆きの告発 周辺や敷地内に露出多めの女性が増え、スマホを片手に…居住者用ラウンジでデート、共用スペースでどんちゃん騒ぎも
NEWSポストセブン
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
デビュー25周年を迎えた後藤真希
デビュー25周年の後藤真希 「なんだか“作ったもの”に感じてしまった」とモー娘。時代の葛藤明かす きゃんちゅー、AKBとのコラボで感じた“意識の変化”も
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
《22歳シングルマザー「ゴルフクラブ殴打殺人事件」に新証言》裁判で認められた被告の「女性と別の男の2人の脅されていた」の主張に、当事者である“別の男”が反論 「彼女が殺されたことも知らなかった」と手紙に綴る
NEWSポストセブン
ものづくりの現場がやっぱり好きだと菊川怜は言う
《15年ぶりに映画出演》菊川怜インタビュー 三児の子育てを中心とした生活の中、肉体的にハードでも「これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していきたい」と意気込み
週刊ポスト
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン