日本における子どもへの虐待が止まらない。厚生労働省の調査によると、18歳未満の子どもへの虐待は30年連続で増え続け、令和2年度には20万件を超えている。現場の多くは表からは見えない家庭内であるため、実際の件数はこれよりもさらに多いと推測される。
一度怒り出すと怒りが止まらずエスカレートしていく。そんな怒りの感情を抑えられない親が年々増えていると、警鐘を鳴らす本がある。日本で唯一の「治療的里親」として知られる土井髙徳氏の新書『怒鳴り親』(小学館)だ。
まずは、次のチェックリストで自身を振り返ってみてほしい。
【1】子どもの不機嫌な顔や声だけで気分が悪くなる
【2】子どもの言動にカチンとくる
【3】子どもの反発につい大人げない反論をしてしまう
【4】親を傷つける子どもが許せない
【5】親が傷ついた分だけ子どもも傷つくべきだ
【6】言うことを聞かない子どもに、高ぶった感情を抑えられない
【7】しつけのためなら、少しくらいは度を過ぎても許される
【8】子どもの言動につい怒鳴り声をあげてしまう
【9】体罰も、子どもが良くなるのなら許される
【10】子どもと激しく対立して衝突してしまう
土井氏は、以上の10項目のうち思い当たる項目が3つ以上ある人は、怒鳴り親の可能性があると指摘する。子育て中の親なら誰でもいくつか思い当たる節があると思うが、改善策はあるのだろうか。著者の土井髙徳氏に話を聞いた。
──本書を執筆したきっかけは。
土井:里親として40年以上、子育てトラブルを抱える親子と向き合う中で、一度怒り出すと止まらない親と、しつけが行き過ぎて子どもの虐待に至るケースの増加を実感してきました。いくら注意しても言動が改まらないわが子を前にして平常心を保てず、怒りが収まらない。そんな『怒鳴り親』であるお父さんやお母さんをはじめ、学校の教師や児童福祉施設の指導員といった大人たちの役に立つことを願い執筆しました。
──誰もが『怒鳴り親』になる可能性があると感じました。
土井:怒りという感情を持っている限り、誰もが『怒鳴り親』になる可能性を持っています。 私自身も子どもを怒鳴って失敗した経験があります。人間関係は鏡ですから、子どもが不機嫌だと親にも不機嫌な気持ちが伝染し、どうしても互いに感情的になって衝突しがちです。しかし、子どもの心を萎縮させ、伸びやかな心身の成長を阻害する“無自覚な叱り方”と“虐待”との違いは、言葉ほどないということをまず知っていただきたいのです。