令和がはじまって4年に過ぎない。しかし、すでに危機を迎えている――そうみるのが新書『危機の読書』刊行に際して対談した元外務省主任分析官の佐藤優氏と慶應大学法学部教授の片山杜秀氏である。そのキーワードは「東京ラブストーリー」と「秋篠宮家」だった。【全4回の第4回。第1回から読む】
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片山:クリミア併合は、日本人の暮らしにさほど影響を与えませんでしたが、ウクライナ危機は違います。いまはまだ「ウクライナの小麦が輸出されなくても、日本にはさほど影響はない」と高をくくっているようですが、生活にも直接的な影響が出はじめている。日本経済も相当なダメージを受ける可能性がある。
佐藤:同感です。この4月は輸入小麦が17.3%値上がりしました。秋にはウクライナ危機の影響でさらに値上がりする。あんパン250円、カップ麺300円、ラーメン1000円という生活が現実になるかもしれない。
片山:日本は何度も食糧危機に直面してきました。それなのに、ラーメンが1000円に値上がりしないと危機を感じられないんですね。食べ物がなくなってはじめて、自分が置かれた危機に気づく。ひどい平和ボケです。
佐藤:いままで日本で問題になっていたのは、相対的な貧困でした。でも、今後は物を食べられない絶対的貧困の時代に突入するかもしれない。日本は確実に貧しくなっている。それを改めて突きつけてきたのが、最近見た『東京ラブストーリー』です。
片山:昔、鈴木保奈美が主演したドラマですか?
佐藤:そうです。1991年版と2020年版を見比べてみたんです。1991年版ではレストランやカフェバーで飲んで、スポーツカーに乗り、保母さんが1DKのマンションに暮らしていた。2020年版では、それが家飲みに変わり、クルマは普通車、住まいはカンカンアパート。
片山:ドラマのリメイクが30年の衰退を描き出してしまったわけか……。現実がドラマを超えてしまったと言えますね。
佐藤:まさにそう。だって小室夫妻の物語を超えるドラマや小説なんて出てこないでしょう。
片山:かつて国民は、天皇家に理想の家庭を投影したわけですが、現実社会で賃金が上がらずに結婚できず、子供もつくれず、核家族すら成り立たない時代になった。そんな状況で、家族の模範として天皇家を持ち出されても、リアリティがない。