中森明菜が活動再開に向け動き出し、松田聖子も苦難を乗り越えステージに立ち続けている。昭和を代表する2人のアイドルが、年末の紅白で揃って歌声を届けてくれるかもしれない──。“永遠のアイドル”松田聖子を見つめ続けた4人が「紅白で聴きたい名曲」を選んだ。
評論家・中川右介氏『櫻の園』
「長引くコロナ禍など暗い世の中を癒やすという意味なら『瑠璃色の地球』ですが、今回は『櫻の園』を聴きたい。『SWEET MEMORIES』を作曲した大村雅朗の遺作です。若くして亡くなった大村が遺していた曲に、盟友・松本隆が聖子の曲にしようと作詞したもので、いわば鎮魂歌です。
その歌詞は、昨年亡くなった愛娘の沙也加さんだけでなく、コロナや水害、震災などで落とした命を悼むレクイエムとして多くの人々の涙を誘うはずです」
【プロフィール】
中川右介(なかがわ・ゆうすけ)/1960年生まれ、東京都出身。2014年まで出版社「アルファベータ」代表取締役を務める。『松田聖子と中森明菜── 一九八〇年代の革命』(朝日文庫)など著書多数。
音楽プロデューサー・若松宗雄氏『赤いスイートピー』
「大人になると、純粋な気持ちを忘れてしまいます。社会で生きるノウハウを覚えれば覚えるほど、澄んだ心は消えていく。すると、感動も薄れていく。『赤いスイートピー』は限りなく純粋な気持ちに戻れる歌なので、今の時代に歌ってほしい。
制作時は春の清々しい季節感を出しつつ、淡い恋心を表現したいと考え、最初にタイトルをつけました。松本隆さんの詞、ユーミンの曲に聖子の個性が同化して素晴らしい歌になった。聖子も自分に素直になれて心が救われる曲だと思う。霧を晴らすような天性の歌声を紅白で聴きたいですね」
【プロフィール】
若松宗雄(わかまつ・むねお)/1940年生まれ、福島県出身。CBS・ソニーのディレクターとして松田聖子を発掘し、数々のヒット曲を生み出した。近著に『松田聖子の誕生』(新潮新書)。