監督辞任と続投の境界線はどこにあるのか──。10月2日、パ・リーグ優勝を懸けた大一番でソフトバンクはロッテに3対5で敗れたが、その試合終了後、大きなニュースが待っていた。続投が既定路線だと思われていたロッテの井口資仁監督がセレモニーで辞任を発表したのだ。
「試合前に決まったため、ファンはもちろん、選手やコーチも知らなかったようです。確かに就任5年でBクラス3回、今年は3年ぶりのBクラスでファンからは続投を疑問視する声もありましたが、球場は騒然となりました。同時に河合克美代表取締役オーナー代行兼社長の退任も判明しました。実質的なオーナーの交代に伴い、井口監督も一緒に身を引く形です。野球界で監督の座は、オーナーが決める。河合オーナー代行と井口監督は一蓮托生だったということでしょう」(球界関係者)
現在のところ、ロッテの井口監督、広島の佐々岡真司監督、阪神の矢野燿大監督が今シーズン限りでの辞任を発表している。
「矢野監督はキャンプイン前日に今季で退任と発表していましたが、井口監督と佐々岡監督はBクラスの責任を取ったかたちです。就任1年目で最下位の日本ハムの新庄剛志監督、中日の立浪和義監督は別ですが、それでは4位に終わった楽天の石井一久ゼネラルマネジャー(GM)兼監督や巨人の原辰徳監督はどうなるのか。
ともに3年契約を結んでいますが、優勝できる戦力がありながら、2年連続でペナントを逃した。続投を疑問視するファンも少なくはないでしょう。しかし、楽天も巨人もオーナーが監督に厚い信頼を置いているので、ロッテのように交代しない限りは2人とも来季指揮を執るでしょう」(同前)
いくら現役時代に成績を残しても、絶大な人気を誇っても、それだけでは監督にはなれない。
「現役時代から癖の強かった落合博満氏が中日の監督になれたのは、白井文吾オーナーの存在があってこそ。そして2011年に連覇を果たしても契約延長にならなかったのは、球団社長が代わり、白井オーナーが抑えきれないほど中日のなかで“反落合派”の勢力が強くなったという側面もあった。
このように、監督になれるかどうかはオーナーの意向が強く、球団内の力学も反映される。1980年、読売新聞の務台光雄社長は巨人・長嶋茂雄監督の解任を決断した。その後も『務台氏の目の黒いうちは長嶋氏の復帰はない』とまで言われました。実際、1991年に務台氏が亡くなるまで、長嶋さんは巨人に戻れなかった。しかし、渡辺恒雄氏が務台氏の後を継いで読売新聞社長になると、1992年の秋に長嶋監督が誕生しました」(ベテラン記者。以下同)
現在の巨人オーナー・山口寿一氏は原監督の手腕を認めており、今季は育成に力を入れる年と明言している。
「巨人史上、同一監督で2年連続シーズン負け越しは原監督が初めてです。普通なら辞任でもおかしくない成績です。しかし、山口オーナーが原監督を評価しているので、退任はないでしょう。昨年オフに3年契約を結んでいますし、今のフロントの体制が続く限り、少なくとも原監督はあと2年指揮を執るのが既定路線です。
ただ、今季の巨人は観客動員に苦しんだ。原監督の野球にファンが飽きている面もあるでしょう。たしかに巨人の監督で最多の通算勝利数を誇りますが、何年も指揮を取り続けると、ファンは『新しい監督を見たい』という欲求にかられます。通算16年もやっているわけですから、違う野球を望む人も多いでしょう」