脳腫瘍が見つかった
まぶたの異変から重病の発見につながった、こんな例もある。
日頃、まぶたが下がってきたとなんとなく感じていたが、加齢による筋肉や皮膚のたるみが主な原因とされる【4】眼瞼下垂だと思い込んでいた30代女性のケースだ。
「眼瞼下垂は、加齢とともに挙筋腱膜という筋肉、または神経の異常で、まぶたが下がる病気です。この30代女性は、眠たそうな目で年齢より老けて見えることが気がかりで受診されました。様々な方向から診察したところ、女性は眼瞼下垂ではなく、目の奥から眼球が押されて前方に突出し、その結果としてまぶたが下がって見えていることが分かったのです」
目の奥から脳にかけての部位に問題がありそうだと判断した梶原院長がCT検査で女性の頭蓋内を確認したところ、脳や脊髄を守るための「髄膜」に大きな腫瘍を発見したという。
「【5】脳腫瘍が、おでこの骨である前頭骨を内側から押したため、まぶたが下がり、眼瞼下垂のような症状を起こしていたのです。手術が必要になるため、すぐに脳神経外科を紹介しました。この女性のように、些細な症状から目や目の奥、そして体に潜む怖い病気が見つかることは、決して少なくありません」
子供のイベントをきっかけに症状に気が付いた40代女性もいる。
「この女性が目の異変に気が付いたのは、小学生のお子さんの運動会がきっかけでした。わが子が走る姿をビデオカメラで追っている最中に見失ってしまうことが何度かあったという。その時は『カメラの使い方が下手なのだろう』とさほど気にしなかったそうですが、そのうち、動いているものだけでなく、周りの風景や鏡に映った自分の顔まで、ところどころ見えなくなり、視野が欠けていることに気が付いたそうです。
それでも痛みがあるわけではなかったので放置していたところ、見えない範囲が広がり、自転車に乗ることもできなくなって、ようやく私のクリニックを受診されました」
梶原院長が検査をしたところ、【6】緑内障がかなり進行した状態で見つかったという。
「緑内障は、目で見たモノの信号を脳へ送るための視神経がダメージを受けて、見えない範囲が少しずつ広がり、失明に至る原因不明の病気です。日本人の失明原因の1位で、40歳以上の20人に1人は緑内障といわれます。治療でできることは悪化を防ぐことだけ。症状に個人差が大きいため、私は患者それぞれにオーダーメイドの『治療法をデザインする』ことを提唱しています」