近年盛り上がりを見せているホラー映画。なかでもNetflixで配信中の台湾映画『呪詛』やタイ・韓国合作の『女神の継承』など、アジアンホラーに注目作が多い。そんなアジアンホラーに大きな影響を与えているのがジャパニーズホラーだ。
ジャパニーズホラーの代表的シリーズのひとつが、清水崇監督が世に送り出した『呪怨』シリーズだ。いまや日本国内だけでなく、海外でも人気が高い清水監督作品。人々を震撼させる作品を生み出してきたのは、どんな人物なのだろうか。 清水監督に話を聞いた。
意外にも、「子供の頃は怖がりだった」と言う清水さん。
「怖がりのくせに幽霊や怪談話を聞いたり、読んだりするのが好きで、夜になると思い出しては眠れれなくなるような神経質な子供でした。物語の内容以上に、想像が膨らんでいくんですよ。たとえば、夜、布団を被っても幽霊が潜ってくるんじゃないかって。あの頃妄想して震えていたことが、いまの映画づくりのアイディアになっています」(清水さん・以下同)
実際、清水さんが監督を務めた映画『呪怨』にはこんな場面がある。主人公が布団に入ると足をガッと掴まれる。恐る恐る布団の中をのぞいてみると、一瞬、幽霊の顔が現れて……。幼い頃の妄想が形になっているのが見てとれる。
そんな清水少年が、映画に目覚めたのは、10才のとき。スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』がきっかけだ。
「最初は怖かったんです。それまでの宇宙人モノはほとんど地球を侵略し、人間を襲ってくる悪者イメージだったし、『E.T.』の宇宙人も、不気味な容姿に見えて。ポスタービジュアルも不気味な指先だったし、“なぜ、こんな映画がアメリカで大ヒットしているんだろう?”と不思議で……。
ところが、ある日、親戚のおばさんに誘われ、怖がりのくせに強がりだったぼくは、断れず映画を見に行きました。
すると、主人公はぼくと同じ10才の少年で、不気味に思っていたE.T.はどんどんかわいらしく思え、たった2時間後には、自分も友達になりたいと思ってしまっていた。そして、最後は感動的なシーンで幕が閉じたんです。
そのとき、“怖いもの=気味が悪い”のではなく、そこには自分が知らなかった挑戦や克服、冒険、感動があるのだと教えられた気がしました」
中学生になり、友人の勧めもあって、清水さんは、中学時代に映画『13日の金曜日』(1980年)などのヒット作を鑑賞。ホラー作品も楽しめるようになったという。
「傑作と呼ばれる作品には、ジャンルを問わず共通して人間ドラマが描かれています。人間の心に闇があるからこそ、モンスターが生まれ、死んだ人が幽霊になるわけです。ホラーと聞くと、血まみれで残酷なイメージばかり持つかたもかなり多いのですが、その根底にあるのは“人間の心の闇”ですし、そこにはホラーでしか描けないドラマがあると思います」