難病と闘い続けた“燃える闘魂”アントニオ猪木さん(享年79)。生前の活躍はプロレス界にとどまらず、政界や実業界にもその名を轟かせた。私生活では4人の女性と結婚するなど、激しく生きた男がこの世を去った。
「(頑張っての激励が)いちばんのおれの敵なの。でも、敵がいる限りいいじゃないですか」
死の10日前、自身のYouTubeチャンネル「最後の闘魂」で、残された力を振り絞るように語ったアントニオ猪木さん。日本のプロレス界を牽引し、国会議員としても活躍した猪木さんが10月1日、心不全のため永眠した。突然の訃報に著名人からもお悔やみの声があふれた。
「私にとって、永遠のスーパースターでございます」
サザンオールスターズの桑田佳祐(66才)はそう語り、フリーアナウンサーの徳光和夫(81才)は「目をとじれば、思い出は尽きない」としのんだ。数々の名実況で名を馳せた古舘伊知郎(67才)は「猪木さんがいなくなった世界はとてもさびしいです」とツイートした。
この数年、猪木さんは「心アミロイドーシス」という難病と闘っていた。たんぱく質由来のアミロイドが臓器に沈着することによって機能障害が引き起こされる病気で、発症のメカニズムは不明。猪木さんはアミロイドが心臓にたまる症状だった。
「10万人に1人とされる難病を抱えながら、体調がいい日は撮影や取材に応じ、8月末には『24時間テレビ』(日本テレビ系)にも出演しました。数年前から入退院を繰り返し、自宅療養に切り替えたのは昨年8月。亡くなる前日から寝たきりになり、静かに旅立ったそうです」(猪木さんの知人)
晩年の闘病生活は壮絶だった。昨年11月、NHKで放送されたドキュメンタリー『燃える闘魂 ラストスタンド』を監修したプロレスライターの瑞佐富郎さんが語る。
「取材クルーが病院に行くと、猪木さんは無理して立とうとしたり、ジョークを言うんです。『頑張る姿を見せないと』と話していましたが、本当はかなりつらかったでしょうね。オンエアでは使われませんでしたが、病院の看護日誌には猪木さんが自死をほのめかしたときの言葉も記されていました」
昨年11月、猪木さんは『女性セブン』記者に苦しい胸中をこう語った。
「寝てもだめ、立ってもつらい、そういう感じなんでね。天井(の模様)を数えながら、いつも何遍も自問自答するんですよ。なんでこんな苦しい思いさせてくれんのと。『元気ですかー!!』ってやりたいけど、元気も言えないくらいきついときがありますから。
人は死ぬときは簡単に死ねるのに、生きていくのがなぜこんなにつらいのか……。それでも、いまはしっかり両足をつけて私らしく最後まで闘いたい。ファンはギブアップを許してくれないからね」
最期まで“燃える闘魂”を貫いた生涯だった。
※女性セブン2022年10月20日号