8月18日、驚くべき研究結果が発表された。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所などによって、腸内細菌の一種「ブラウティア菌」に、肥満や糖尿病を予防・改善する可能性があることがわかったのだ。ブラウティア菌はアジア人、特に日本人の腸内で比較的多くみられる菌だ。研究に参加した同長の國澤純さんが説明する。
「同じ地域に住んでいる人を対象に『肥満』または『糖尿病』に該当する人とそうでない人の腸内細菌をそれぞれ比較したところ、肥満でない人・糖尿病でない人は、共通してブラウティア菌が多かった。そこで、高脂肪食を与えて飼育したマウスにブラウティア菌を与えたところ、肥満や糖尿病の抑制が観察されました」
國澤さんによれば、ブラウティア菌は代謝促進効果や炎症抑制効果のある物質をつくり出すことで、肥満や糖尿病を抑える作用が期待できるという。
「ブラウティア菌は、アミノ酸をえさとして、オルニチンやSアデノシルメチオニン、アセチルコリンといった物質をつくり出します。これらは、糖尿病の発症抑制につながる代謝促進効果や、炎症を抑える作用があることがわかっています。また、食物繊維と同じ働きをするアミロペクチンをつくることもわかっています。これにより、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境の改善にも役立つでしょう」(國澤さん)
ブラウティア菌に関する研究は現在も続けられており、人での有用性や安全性が認められるなどすれば、近い将来、機能性食品や医薬品に活用される可能性もあるという。医学博士で管理栄養士の岩崎真宏さんが言う。
「ブラウティア菌は、穀類やいも類、豆類に多く含まれるレジスタントスターチという難消化性でんぷんをえさにして増殖します。レジスタントスターチは、冷たい炭水化物に多く含まれている。お弁当やお寿司など、冷たい炭水化物を日常的に食べる日本固有の食文化が、腸の中でブラウティア菌を育てたのかもしれません」
意外なことに、ブラウティア菌は日本人だけでなく、スウェーデン人の腸内にも多いことがわかっている。当然ながら、人種も生活環境も、歴史的背景も日本とはまったく異なる国だ。だが、スウェーデン人はじゃがいもを主食とするため、でんぷんの摂取量が多い。また、大麦などの穀物や豆類、魚介類、発酵食品をよく食べる食生活は日本人に似ていると言える。