体の様々な痛みを解消するにはツボ押しを試してみる価値がある。
「西洋医学と異なりツボの効果は解明されていない部分も多いのですが、研究が進むことでメカニズムが少しずつ明らかになってきています。全身の痛み、不調や血液の巡りに効果的とされます」
そう語るのは、源保堂鍼灸院の瀬戸郁保院長だ。
「ツボを押すと神経を通して脳へ刺激が伝わり、それを受けた脳が精神を安定させるセロトニンなどの神経伝達物質を出すことで患部に効果をもたらすという研究があります。さらに、ツボの刺激で全身の免疫力を高めるという研究結果もあり、全身のエネルギーを活性化させると考えられています」
東洋医学では、人間の身体にはエネルギー(気血)を運ぶ「経絡」が走っていると考えられている。経絡が「線路」だとすればツボ(経穴)は「駅」であり、ツボを押すことで気と血液の巡りがよくなるとされている。
「現在、361個のツボの存在がWHO(世界保健機関)で公式に認められており、それらは経絡上に存在します。そして、経絡には山手線のようにぐるっとつながっている“環状線”や、枝分かれした“ローカル線”があることが分かってきました。そうしたなかには、ツボから離れた部位や、一つのツボで複数の部位に効果が期待できるケースもあるのです。
ツボを押す場合、疲れや痛みを感じた時に5秒程度を3回、それを1セットにして一日に何度押しても大丈夫です。『漸増漸減(ぜんぞうぜんげん)』という言葉が東洋医学にはあり、ゆっくり押してゆっくり力を抜くことがポイントです」(瀬戸氏、以下同)
基本を押さえたうえで、痛みの部位ごとに効果があるといわれるツボの押し方や考え方を解説していく(別掲図参照)。
ひざの裏と腰のつながり
まずは、全身の痛みへの効果が期待される合谷(ごうこく)だ。
「合谷は“オールマイティのツボ”と呼ばれ、頭痛から歯痛、胃腸の痛みなど全身の痛みに効果的とされます」
場所は親指と人差し指の骨の交差点から、やや人差し指側に寄った骨のキワにある。「万能のツボ」として、まずは合谷を押すことで痛みや不調に効果を期待できる。
「合谷は数あるツボで唯一、口腔内の神経とつながっていることが解明されており、虫歯や歯茎の痛みに効きます。さらに、神経から脳につながり、全身に鎮痛効果をもたらします。また、経絡は大腸とつながっており、さらに肺にもつながっているとされます」
頭痛にいいとされる天柱(てんちゅう)は、後頭部の髪の生え際で、首の太い筋肉「僧帽筋」の外側にある。
「頭を支える筋肉を刺激することにより、パソコン作業などで長時間緊張することで起きる頭痛やこりの軽減が期待できます。頭を両手で抱え、両手の親指を天柱に当てて頭を後ろに倒して重さを感じながら刺激するといいでしょう。
天柱から指1本分ほど斜め上のくぼみにある風池(ふうち)は、目の疲れや目の奥の痛み、頭痛に効きます。反対側の手で頭を支え、指の力が目に向かうようにツボを押します」