長澤さんは“新薬の罠”を指摘する。
「特に海外メーカーが開発した新薬は、日本人患者のデータが少なく、治験は経ているものの日本人の使用実績は国内の薬と比較して少ないため、まだ明らかになっていない副作用が出る可能性がある。
もちろん、効果も安全性も高い新薬もありますが、新しいというだけですぐに飛びつくのは避けるべきです。思いがけない副作用を避けるためには、なるべく日本人の使用実績の多い薬を使うことを推奨します」
さらに気をつけるべきなのは、コロナ禍でこの風潮に拍車がかかっていることだ。
「最近、新型コロナワクチンをはじめとして、海外で開発された新しい治療や薬に関して承認のスピードを重視するあまり、充分な検証や治験が省略されるケースが散見されます。海外の新薬を承認するのに時間がかかることを『ドラッグラグ』といって批判する風潮もありますが、ある程度時間差があることで安全性が保たれている。評価が定まらない薬を使用することに、疑問を感じます」(岡田さん)
そもそも、副作用のない薬は存在しない。もしいま受けている治療や薬に関して不安が生じたら、すぐに医療従事者に相談しよう。
「お薬手帳を使って、それまでにのんだ薬や副作用やアレルギーの有無をわかるようにしておくことを推奨します。血圧の薬ひとつとっても何種類もあり、それぞれ作用や副作用が異なります。疑問を感じたら医師に確認してほしいし、相談しづらければ薬剤師でも対応できます」(長澤さん)
東京大学大学院薬学系研究科准教授の小野俊介さんは治療で何を優先したいかを明確にしておくことも重要だとアドバイスする。
「人種や民族の違いによって体に合う治療が異なるだけでなく、日本人と欧米人では治療において重視するポイントも異なります。たとえば、血液をサラサラにして肺塞栓やエコノミークラス症候群を予防する『抗凝固薬』は、副作用で皮下出血が出ることがあります。
アメリカ人は多少の副作用をがまんしてもしっかりと効いてほしいと考えるが、日本人は出血を気にする傾向にある。どちらが正しいとは一概にはいえませんが、治療において何を優先したいのかを明確にしておくことは必要です」(小野さん)
欧米かぶれから脱して、本当に体に合うものを見極めるべきときが来た。
※女性セブン2022年10月20日号