ライフ

【和田秀樹×大脇幸志郎】異色医師対談「成人病を生活習慣病と呼び替えたことが生んだ誤解」

高血圧治療についても指摘

医学界の常識への疑問などを語り合った(イメージ)

 ヘルスケア機器を手掛けるオムロンの調査(2017年実施)によると、全国30~74歳の男女1万人のうち、3人に1人(32.1%)が健康診断で「血圧が高め」と指摘された経験があるという。

 日本高血圧学会などの調査(2022年)では、2014年時点の日本の高血圧患者数は約2700万人だった。まさに“国民病”であり、それに伴って数値を下げるために複数の降圧剤を服用する多剤併用の問題なども起きている。

 多くの人が血圧の数値に一喜一憂する現状があるなか、「気にする必要はない」と語る医師がいる。

 一人は東大医学部卒でベストセラー『80歳の壁』の著者として知られる精神科医・和田秀樹氏(62)だ。同書では、80歳から先の「健康寿命」を延ばすために「食事や運動で無理や我慢をしすぎない」「一律に数値で示される健康診断の結果を鵜呑みにしない」ことなどが大切だと解説し、多くの読者の共感を集めた。

 そしてもう一人が、同じく東大医学部卒の内科医・大脇幸志郎氏である。『運動・減塩はいますぐやめるに限る! 「正しい健康情報」の罠』などの著書がある大脇医師は、医学界の常識を批判し、「健康のため」と称して社会に蔓延する非合理が多いことを訴えている。本誌・週刊ポストでも、「減塩はやめろ、油を摂れ」と題した特集で持論を展開し注目を集めた(2022年4月22日号)。

 ともに東大医学部卒の両者が、医学界の常識への疑問や、医療と患者のあり方について語った。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
和田:日本ではコレステロール値や血糖値にうるさいよね。私が以前所属していた、高齢者医療を手がける浴風会病院(東京都杉並区)で得たデータでは、亡くなった人を解剖すると、アルツハイマー病の割合は糖尿病のある人はない人の3分の1だった。このことから、私は低血糖状態の脳へのダメージのほうが、(高血糖より)害があると信じています。だから私自身は血糖値を300mg/dl、HbA1cも10%ほどにコントロールしています(基準値はそれぞれ100mg/dl未満、4~5.5%)。

大脇:コレステロール値は下げたほうが予後がいいとのデータがありますが、心筋梗塞や脳梗塞を発症しても、それがコレステロールのせいかどうかは判断しようがない。予防効果は統計的にしか確認できません。だから薬を飲んでも自分では効果が実感できないのだと分かったうえで、薬を受け取ってほしいと思います。

 特に最近のコレステロールの薬は価格の高いものがあるので、それに見合う効果があるかもポイントです。

和田:言い出したらキリがないが、人間には個人差がある。高齢者ほど個人差はいろいろな意味で大きくなるので、そこを考えるのは大事です。

大脇:年齢に関係なく、個人差を意識することは必要ですが、根本的に医学が持つのは統計データで、患者が欲するのは自分についての真実です。和田先生が自身の血糖値や血圧を高くコントロールするのが好例で、統計的な傾向でその人に起こることを説明することはできません。より大事なのは、本人がそれで良しとするかどうかです。

和田:かつて成人病と言われた病気を生活習慣病と呼び替えたことが誤解を生んでしまったと私は思います。生活習慣を改善し、血圧や血糖値を薬でコントロールしたら、心筋梗塞や脳梗塞にならないと思っている人がたくさんいる。しかし、浴風会病院では、検査データが正常でも、結果的に70代以降で動脈硬化がない人はいませんでした。基本は老化病なので、予防的に生活習慣に介入しても、発症を遅らせることができるだけの話です。

大脇:生活習慣による病気発症への寄与はすごく小さい。医者の言う「生活習慣の改善」で健康効果を得て長期的に利益を得ている人もいるかもしれませんが、それ以上に“病気を自分のせいにしてしまう”という悪い面があると思います。

 現在の脳卒中や心筋梗塞の治療は、それ以上悪くならないようにするものでしかなく、医者は元に戻すことはできない。その事実を隠し、“自分が気を付けていなかったせいで発症した”と患者に責任転嫁するような空気が生まれるのはよくないことです。

関連記事

トピックス

「みどりの『わ』交流のつどい」に出席された秋篠宮家の次女、佳子さま(2025年12月15日、撮影/JMPA)
佳子さま、“ヘビロテ”する6万9300円ワンピース 白いジャケットからリボンをのぞかせたフェミニンな装い
NEWSポストセブン
オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン