2022年のドラフト候補は「不作」──。それがスカウトの共通見解だ。要因はコロナ禍に尽きる。
とりわけ今年の高校3年生は入学のタイミングから練習や練習試合の自粛を余儀なくされ、公式戦が中止になるなど不遇をかこった。技術も肉体も伸び盛りの時期に野球と距離を置く生活が長かったことで、例年に比べて成長度がどうしても見劣りしてしまうのだ。
大学・社会人も即戦力候補に乏しく、今年は将来を見据えた好素材に指名が集中することが予想される。
それでも競合必至なのが、日本体育大の矢澤宏太だ。1年春にまずは打者として注目を集めた。広角に打ち分けられ、勝負強さも併せ持つ。さらに3年生になると投手としても台頭し、左のスリークオーターからMAX152キロの直球を投げ、縦のスライダーで空振りを奪う。打者か、投手か。大谷翔平の活躍によって、二刀流の道も拓けているのが現代であり、大谷を育てた北海道日本ハムが1位指名を公表した。
二刀流といえば、甲子園のスターとなった近江の山田陽翔(はると)もそのひとりだが、「投手として勝負したい。ただ、指名してくださる球団の意向によっては……」と打者専念の可能性も口にした。2年夏から甲子園での登板過多の印象は拭いきれず、右肘に不安も残る。その点が指名順位に影響する可能性はあるだろう。
巨人が既に1位指名を公言している高松商業の浅野翔吾も、とりわけ外野手の補強が急務の球団による競合が確実視される。今夏の甲子園で3本塁打を放った大砲は、身長171センチと小柄ながらも自信をのぞかせた。
「身体が小さいからといって不利に感じることはない。とにかく負けず嫌いなんですよ。自分のゾーンでボールを捉えられたら、ボールは勝手に飛んでいくと思っています」
数少ない即戦力投手として名前が挙がるのが白鴎大の曽谷龍平。秋田・ノースアジア大明桜高校時代は山口航輝(現千葉ロッテ)の控え投手だったが、4年間で世代ナンバー1の左腕に。力みのないフォームから最速152キロを投じ、先発・中継ぎ・抑えのいずれでも力を発揮するはずだ。オリックスが1位指名を公表している。
ドラフト会議の目前で福岡ソフトバンクが1位指名を公表し“大穴”から“大本命”に躍り出たのが誉(愛知)のイヒネ・イツア。ナイジェリア人の両親を持つ遊撃手だ。甲子園出場は一度もなく、身体能力だけで野球をやっている印象だが、それだけにプロの指導で大化けする可能性はある。
注目選手が少なく各球団の上位指名が読めないからこそ、我先にと1位指名を公にする駆け引きも、例年より早まっている印象だ。ビッグサプライズが続出するドラフトになるだろう。