韓国のアイドルグループと「兵役」は、切っても切れない関係にある。それは、絶大な人気を誇るBTSも避けては通れないものだった。全世界が注目した伝説の釜山ライブの全貌がここに──。
午後6時、花火が打ち上がり、赤い光のなかから7人が登場すると、韓国・釜山の街全体が熱狂のるつぼと化した。10月15日、音楽グループ『BTS』が2030年の万博誘致を目的とした無料ライブ「BTS〈Yet To Come〉in BUSAN」を開催した。
会場となった釜山アジアドスタジアムには世界中から5万人のファンが集まり、市内2か所のパブリックビューイング会場にも1万2000人が詰めかけた。さらに、ライブの様子はインターネットで全世界に同時配信され、視聴者数は229の国と地域で、4900万人を超えたという。
「ARMY」と呼ばれる、BTSの熱狂的なファンにとって、今回のライブは特別な意味合いを持つものだった。最年長メンバーのJIN(29才)に兵役の入隊期限が迫っており、「7人揃っての入隊前最後の舞台」といわれていたからだ。そのため、チケットがなく会場に入れないにもかかわらず、歴史的瞬間に立ち会うため、日本から釜山へ向かう人も多くいた。
「市内の観光名所がグループカラーの紫にライトアップされているし、あちこちにBTSのパネルやポスターがあって、街を歩くだけで大満足でした」(40代のファン)
ただ、多くの人が集まったことでトラブルも発生した。
「海雲台海水浴場のパブリックビューイングの会場は、チケット制ではなく先着順。11時間並んで、なんとかすべり込みました。トイレで列を離れることさえ不安で、努力が台無しにならないようにおむつをはいて臨みました。彼らのためなら、何だってできますよ!」(30代のファン)
パブリックビューイングでさえこんな状態。驚異的な倍率のプラチナチケットを勝ちとった人も、安心できなかった。
「会場に入る際、厳しい本人確認が行われたことで、入場がスムーズに進まなかったんです。開演時間になっても入場できていない人が多くいました。最後の方はドタバタなまま会場案内したことで、観客席として予定していなかったスペースがスタンディングエリアになりました。
その影響で、人気曲の『Yet To Come』のPVに登場したトラックにメンバーが乗って会場を回る演出があったのですが、車が入れず、取りやめになってしまったのです。メンバーは臨機応変なパフォーマンスで乗り切っていましたが……」(韓国の芸能関係者)
ライブは2時間で、全19曲が披露された。しかし、ARMYが酔狂したのは圧巻のパフォーマンスのみならず、メンバーが率直な気持ちを明かしたMCのシーンにあった。
前述したように、「7人揃っての入隊前最後の舞台」であることは、メンバーたちにとっても大きな意味を持っていた。順番にARMYに向けて語りかけるMCは30分以上続いた。口火を切ったJ-HOPE(28才)の言葉には寂しさが漂った。
「メンバーが集まるこの瞬間が本当に待ち遠しかったです。ソロ活動をしていても、ほかの6人がいないとどうしようもなく寂しくて……。メンバーと一緒にいられるだけで、元気が湧いてくるんだと改めて思いました」