2022年プロ野球ドラフト会議が10月20日の17時から始まる。毎年“運命の”と形容されるように、候補選手たちの人生を左右する1日となる。10月19日時点で、巨人が浅野翔吾(高松商高)、広島が斉藤優汰(苫小牧中央高)、オリックスが曽谷龍平(白鴎大)、ソフトバンクがイヒネ・イツア(誉高)、西武が蛭間拓哉(早大)、楽天が荘司康誠(立教大)、日本ハムが矢澤宏太(日体大)、ヤクルトが吉村貢司郎(東芝)、中日が仲地礼亜(沖縄大)と、実に9球団が1位指名選手を公表している。
「これだけの数の球団が事前に発表するのは異例ですね。しかも、各球団とも別の選手で、1人も被っていない。1位指名選手を公表したチームは、それ以外の球団に“競合を避けてほしい”という狙いがあると思います。駆け引きの1つですよ」(野球担当記者)
過去のドラフトでは事前の大方の予想と違う選手を指名し、大きな話題になった球団もあった。
「昔から公表に近いことはありましたが、他球団は『本当に指名するのか?』と疑心暗鬼になっていた。思い出すのは、PL学園の桑田真澄と清原和博がドラフトの目玉として注目されていた1985年です。桑田は早稲田大学への進学を表明しており、ほとんどの球団は手を引いた。清原は巨人か阪神を熱望していましたが、数球団の入札が予想されていました。
ドラフト前、巨人は清原を指名すると報じられていました。絶対に1位指名すると公表したわけではないですが、当時の王貞治監督も認めているように捉えられる発言をしていた。しかし、西武は疑っていたようです。実は巨人の狙いは、1位・清原、2位・桑田だったと言われています。それを察知した西武の根本陸夫管理部長が『西武が桑田真澄を1位指名するかもしれない』という情報を流して、巨人を慌てさせた。そして当日、巨人は1位指名を清原から桑田に切り替えた──。このような説が今では一般的になっています」(同前)
逆指名制度の導入時は視聴率が半減
ドラフトは選手の将来を決める大事な会議だが、エンターテイメントの要素も詰まっている。ファンはどの球団が誰を入札するかを予想し、当日の意外な指名に驚く。複数の球団が競合した場合のくじ引きは、ドラフトが最も盛り上がる場面である。
「最近、プロ野球が地上波で放送される機会はどんどん減っているし、土日の14時や15時から中継されても、巨人戦で4%前後ですよ。今年は巨人戦で2%台もあったし、巨人以外の試合だと1%台もある。それなのに、ドラフトは毎年中継されて、平日の夕方にもかかわらず、視聴率が10%を頻繁に超えています。プロ野球人気の維持や向上に一役買っていることは間違いないでしょう。
ちなみに、隅田知一郎(西武)が4球団に指名された昨年は9.2%、佐藤輝明(阪神)や早川隆久(楽天)に4球団が競合した2020年は10.0%、奥川恭伸(ヤクルト)や佐々木朗希(ロッテ)が抽選になった2019年は11.0%(いずれもビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)でした。今年はくじ引きの数も少なくなりそうで、2桁を割るかもしれませんね」(民放のスポーツ局担当者)
事前に指名を公表する球団が9つもあれば、エンターテイメント性は薄れるだろう。どの球団が誰を入札するかを注視し、当日まで楽しみにしているファンも多い。