日本人の死因1位であるがん。早期発見のために行なわれるのが、自治体などの「がん検診」で、現在、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診が行なわれている。だが、新潟大学名誉教授で医学博士の岡田正彦氏は疑問を投げかける。
「がん検診には精度に難があったり、受けて得られるメリットよりデメリットが多い検診もある。毎年検診を受ける必要性は感じられません」
検査を受けて無意味どころか、弊害まであるとすればたまらない。
特に日本人男性のがん死亡数1位である肺がんの検診で推奨される「胸部X線検査」には疑問の声が多い。
「レントゲンで肺を撮影し、陰影を確認して腫瘍の有無をチェックします。しかし、胸部X線検査で肺がんによる死亡率が減少するエビデンスは存在しません。むしろ、喫煙男性約9000人に対して肺がん検査を受ける群と受けない群とに分けて行なわれた調査で、検査を受けたほうが肺がんを含むあらゆる疾患で死亡率が高かったというデータさえある。胸部に直に放射線を浴びることで、食道がんなどの新たながんを誘発したりするリスクも懸念されます」(岡田氏)
肺がん検診の精度は高いとは言えない。X線写真の解像度が低く、過去に“見落とし”が問題となったケースもある。自治体でがん検診を行なう「日本対がん協会」によると、2020年度の全国の肺がん検診受診者は約256万人で、そのうちがんが見つかったのは0.04%の1136人。
一方、精密検査や人間ドックのオプションのCT検査では1センチ未満の肺がんを発見でき、より精度が高い。
「ただし、CT検査は全身を輪切りにして放射線を浴びせるので被曝のリスクはより高い。X線検査の1000倍とされるということは知っておくべきでしょう」(岡田氏)
頻繁に受ければいいというものではないのだ。