ライフ

【がんになった医師が明かす私の治療方針】患者になって初めて知った苦しさ

(写真/GettyImages)

がんを経験した医師が治療を語った(写真/GettyImages)

 餅は餅屋、弓矢の道は武士が知る、舟は船頭に任せよ──。その道のプロこそが最も知識と経験が豊富であるのは、病気も同様だ。「医師」と「患者」、両方の立場を経験したからこそ話せるがんとの向き合い方。がんを経験した5人の医師に「私の治療方針」を聞いた。【全3回の1回目】

「いまの体調ですか? がんに関していえば、胃も前立腺も問題なし。胃カメラで見ると、手術のときにえぐり取った痕はあるけれど、胃はそのまま残っていて、食べるのにも影響ない。まあ、臓器が残っているから、またがんができるかもしれないという心配はあるけどね(笑い)。

 前立腺も、手術直後は少し痛みが出たり排尿のコントロールが難しかったりしたものの、3か月もすれば影響はほぼなくなりました」

 2007年に胃がん、2009年に前立腺がんに罹患した東京医療保健大学副学長の小西敏郎さん(75才)。いまの体調はがんになる以前とほぼ変わらないと笑顔を見せる。

 日本人の約半数が罹患する国民病の魔の手が迫るのは、健康のエキスパートである医師たちも例外ではない。

 手術をするかしないか、病院は何を基準に選ぶか、仕事への復帰はいつするか──。一口にがんと言ってもそこには無数の選択肢が存在する。いざ、がんにかかったとき、医師たちは自らのためにどんな選択をしたのだろうか。

小西敏郎さん

小西敏郎さん

キャンサーギフトなんてありがたくない

 罹患前と同じ状態を取り戻した小西さんは、何よりも検診による早期発見が重要だと訴える。

「胃がんに関しては、1〜2年に1回の胃カメラ検査を受けていれば、早期の段階で見つかる可能性が格段に高まる。実際、私も毎年1月4日に初出勤をして病院のスタッフに新年の挨拶をした後、検診を受けることを習慣にしていたからこそ、初期の段階で見つけることができたのです。早期発見できれば、体に負担が少ない内視鏡手術で治療できることも多い。ただし、やみくもに検査を受ければいいというわけではない。バリウム検査で見つかるがんは基本的には進行した状態のもの。検査を受けるなら、胃カメラを推奨します」(小西さん)
 
 定期検診に加え、普段から取り組みたいのはセルフチェックだ。

 5年前に乳がんが見つかった東京女子医科大学放射線腫瘍科教授で乳がんが専門の唐澤久美子さん(63才)は、入浴中にがんに気づく。

「右内側の上部にしこりがあるのを偶然見つけました。医師として『セルフチェックが大事』と人に言ってきたのに、忙しくて自分ではできていなかったんです。その場で自分で触診して“乳がん、腋窩リンパ節転移なし”と判断し、すぐに同僚の教授に連絡して生検(病変の一部を採って顕微鏡でがんかどうかを調べること)を行いました。ステージIIでリスクが高かったため、抗がん剤でがんを小さくしてから、乳房の部分切除と放射線治療を行い、ホルモン剤をのむことになりました」(唐澤さん)

 セルフチェックを怠ったことに後悔はあったものの、検査の結果を告げられたとき、自分の診断が正しかったことに安堵したという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン