宝塚のトップスターといえば、生活感が想像できない雲の上の存在といったイメージだ。
宝塚月組のトップスターを務め、哀愁漂う二枚目としてファンを魅了した真琴つばさ。ファイナル公演のパレードには約1万人のファンが集まるほど惜しまれて退団した。57才になる今は、舞台、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍する。
元トップスターにプライベートな質問などしないほうがよいのだろうか、とちょっとドキドキしながら取材が始まるのを待っていると、
「今日はよろしくお願いします。○○さん」
とわざわざ記者の名前を呼んであいさつしてくれた真琴。背筋がシャキッとしてさすが華があるとはこういうことか、と伝えると、
「実は私、ほんとうに姿勢がいいのとは違うの。体が硬くて無理に姿勢よくしている感じなんですよ。直したいとは思っているんだけど、なかなか直らなくって。
背中の筋肉がすごいんですよ。自慢してジムのトレーナーさんに見せたら、『真琴さん、この筋肉違います』って言われちゃいました。力が入っている場所が違うんですよね。ここについたらダメなのっていうところについちゃってるみたい(笑い)」
と意外なほど気さく。仕事でも自分でメイクする真琴は、この日の撮影も自前メイクだった。
「メイクさんにしてもらいたいとは思うんですけど、まずじっとしていられない。座ってボーッとしているのができなくて。それに、メイクしてもらっていると呼吸ができなくなっちゃうから、自分でやったほうがラクなんです。宝塚では自分でメイクするのが基本なので、退団してからも、公演のポスター撮りとかヘアメイクを統一する時以外は、自分でやっています」
それ以外にも、「宝塚時代の経験が細胞にたたき込まれている」ことはいろいろあると言う。たとえばどんな時にそれが出てくるのかと尋ねると、
「一番わかりやすいのはエレベーターに乗った時ですね」
トップスターだったら当然、エレベーターでも一番奧に乗って、颯爽と先頭に立って降りていくとか?