スポーツ

【伝説の日本シリーズ】1958年の稲尾和久 6試合登板で578球「奇跡の4連勝」

1958年の日本シリーズの活躍で、「神様、仏様、稲尾様」と称賛された(イメージ)

1958年の日本シリーズで稲尾和久は「神様、仏様、稲尾様」と称賛されるほど活躍(イメージ)

 球界を代表する投打のスターがぶつかり合うのが日本シリーズの醍醐味だ。やっぱり日本シリーズは面白い──そう思わせてくれた1958年の西鉄対巨人の日本シリーズの名勝負を振り返る。第1戦から3連勝を飾った巨人だが、第4戦が雨で1日順延となったことで戦いの潮目が変わった。(文中敬称略)【全3回の第2回。第1回から読む

 西鉄は順延の1日だけ休んだ稲尾和久が中1日でマウンドに上がったが、勢いに乗る巨人が初回無死満塁から長嶋茂雄の犠飛で先制。その後も3対0と差をつけたが、西鉄がここからひっくり返す。打者・稲尾が押し出しの四球を選び同点に追いついた勢いで、6対4と逆転勝利。126球で完投した稲尾は勝ち投手となった。

「そこからの稲尾の活躍は凄まじく第5戦、第6戦も稲尾は救援登板、先発と投げて3試合連続で『勝ち投手』に。完封を許した第6戦では、長嶋は4打数無安打1三振と完璧に抑え込まれました。

 最終第7戦も稲尾が先発。巨人は9回に長嶋茂雄がランニングホームランを放って完封こそ防いだが、稲尾は勝ち投手になり、チームの勝ち星をすべて1人で挙げた」(スポーツジャーナリスト)

 このシリーズで稲尾は7試合中6試合に登板。578球を投げ、西鉄は3連敗から「奇跡の4連勝」を果たした。当然ながらMVPを受賞したのは稲尾だった。

 この時、西鉄打線の主砲だった中西太が当時の稲尾と長嶋の戦いを語る。

「稲尾君は何よりピッチングに力みがなかった。それは足腰のバネが強くて、コントロールが良かったということ。とくに外角へのコントロールは絶妙だった。いずれにしても『短期決戦』で打たれないピッチングができるピッチャーだった。そこが向こうと差を分けたのかもしれない。何より稲尾君は一度寝ると何時間でも寝られるという神経の図太いところがある男だったからね」

 このシリーズで稲尾と“心中”した西鉄。現代では考えられないような無茶な連投にも、チームを率いる三原脩監督なりの哲学があったという。

「三原監督は“花は咲きどき、咲かせどき”という方針で、何でもかんでも稲尾一辺倒ではなく、勝てると判断して投入していた。練習でも作戦面でも三原監督は無駄なことや意味のないことはやらない人でしたから。

 特に短期決戦での選手の使い方が上手かった。三原監督は九州の田舎チームが大巨人軍を相手に戦うという晴れの舞台で、稲尾を全国に売り出そうという狙いがあった。それがツボにハマったというか、稲尾が期待に応えたということ。稲尾は本番に強い選手で、それを監督は見抜いていた」(前出・スポーツジャーナリスト)

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【約4割がフジ社内ハラスメント経験】〈なぜこんな人が偉くなるのか〉とアンケート回答 加害者への“甘い処分”が招いた「相談窓口の機能不全」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【被害女性Aさんが胸中告白】フジテレビ第三者委の調査結果にコメント「ほっとしたというのが正直な気持ち」「初めて知った事実も多い」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン