【著者インタビュー】ヒオカさん/『死にそうだけど生きてます』/CCCメディアハウス/1650円
【本の内容】
本書は「今までのこと──どこにも居場所がなかった」そして「その後のこと─居場所で考えた14の断片」の大きく2部構成になっている。幼い頃について綴った文章にこんな一節がある。《檻のなかの十八年間は、熱せられた板の上で弱々しく踊る灰のようだった。板の下には燃えさかる炎があって、迫る灼熱に、なす術もなく身を預け、堪え忍ぶ》。ヒオカさんが受けた暴力、強いられた我慢と屈辱が具体的なエピソードで、しかし淡々と綴られていく。そしてPart2ではそれがヒオカさん個人のことにとどまらず、いまの日本社会にとっていかに喫緊の課題で、にもかかわらず、いかに見落とされてきたか、鋭い分析がなされていく。
自分の中に第三者の書き手がいて、記録している感じ
「note」で公開した「私が“普通”と違った50のこと──貧困とは、選択肢が持てないということ」が話題になり、20代の論客として注目を集めるヒオカさん。『死にそうだけど生きてます』は、彼女自身の壮絶な人生をたどる、初めてのエッセイ集だ。
育ったのは中国地方の過疎地の村。一家が暮らす団地には貧困世帯が集まっていた。父は精神障害を患って仕事が続かず、母を殴り、娘たちを怒鳴った。中学校ではいじめに遭って、一時、不登校に。
勉強をがんばって高校は進学校へと進み、関西の公立大学に合格するが、シェアハウスでの切り詰めた生活で体調を崩す。就職先はブラック企業で退社……。自分の人生を切り開くべく、努力してやっと階段を上がると、そこには新たな苦難が待ち受けている。淡々とした筆致で書かれてはいるが、毎日が綱渡りで、目の前にいるヒオカさんに、よくここまでひとりで切り抜けてこられたな、と思ってしまう。
「書くのつらくない?って何度も聞かれるんですけど、自分ではそれほど大変だとは思ってなくて。自分の中に第三者の書き手がいて、その人が客観視して、記録している感じです。
それでも時々、ヒリヒリすることは、えぐられている感じが蘇ることはありますね。ただ、もっとすごい大変なかたのことをたくさん知っているので、自分はそんなでもないかな、という気持ちもあります。私こんなに大変だったの、というウエットな感じでなく、読んだ人が自分の隣にもこういう人がいるかもしれないと思ったり、私の体験を通して社会構造の問題が見えたりするように書きたかったですね」