1973年12月、老齢年金の増額を訴え、総決起集会に参加するお年寄りの人たち(時事通信フォト)

1973年12月、老齢年金の増額を訴え、総決起集会に参加するお年寄りの人たち(時事通信フォト)

 聞いていてとても怖くなる。実際にその年になってみなければわからない話だが、筆者も含めておそらくは、65歳まで年金を支払い、受給年齢すら引き上げられてしまうかもしれない。2022年4月から年金の受給開始年齢を最長75歳まで引き上げられるようになったが、2000年にそれまでの60歳から65歳に受給年齢が引き上げられたのと同様、その75歳が将来的な受給開始年齢になってしまうかもしれない。男性の平均寿命は81.47歳(2021年)ということで受給年数は約5年、つまるところ「払った額は、ほぼ貰えない」ということになる。これでは現在の中高年から下は払い損というより「年金制度はなかった」ということになってしまう。個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の加入もまた69歳以下までの拡大が検討されているが、ぶっちゃけ、財務省の言いなりでしかないこの国は、取れるだけ取って、公的福祉の面でいまの現役世代の面倒を見る気はないのだと思わされてしまう。

 ちなみに老後も介護保険料は一生払い続けることになる。各種税金も光熱費も、NHKの受信料も生活保護にならない限り、死ぬまで払い続けることになる。60歳からの労働をどうするか、私たちは本気で考えなければならない。会社に残れるから、は彼らの言う通り本当に危険だ。

 60歳までから65歳までに引き上げられる見込みの年金支払い期間、この5年の延長こそ、まさしく「自助」という日本政府のメッセージだろう。この国のスローガンである「人生100年時代」もまた「労働100年時代」ということなのだろう。思うように働けなくなった高齢者から順に切り捨てる。恣意的な優勝劣敗の、棄民政策とともに。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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