腎臓の機能が低下する慢性腎臓病は“新たな国民病”ともいわれ、罹患者は成人の8人に1人にのぼる。自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授の黒尾誠さんが解説する。
「慢性腎臓病は初期であればその原因をきちんと治療することで進行を防げますが、『腎不全』にまで進行すると、透析を受けることになります。加えて慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧が原因で起きる場合が多く、腎不全に至る前に脳卒中や心筋梗塞を合併して死に至ることもある。
わかりやすい初期症状は、『尿量の増加』です。腎臓が弱ると尿の濃縮力が低下するので、薄い尿が多量に出ます。夜にトイレにいく頻度が増えたら、腎機能が低下している可能性があります」(黒尾さん・以下同)
黒尾さんは、腎臓を健康に保つために取り組むべきは、リンの摂取量を減らすことだと指摘する。
「リンは歯や骨を構成するために必要な成分ですが、過剰に摂取すると、動脈硬化や慢性腎臓病の進行を加速する『老化加速物質』にもなります。特に腎臓においては、左右にそれぞれ100万個以上存在し、血液のろ過装置として機能している組織『ネフロン』が、リンを摂りすぎると減少してしまいます。
特にソーセージやインスタントラーメンなど加工食品に含まれている添加物中の『無機リン』は消化管からの吸収率が高い。食品表示をチェックして『リン酸塩』と書いてある商品は摂取を控えてほしい。反対にマグネシウムや亜鉛はリンの弊害を抑えるので、積極的に摂るといいでしょう」
リンの摂取に加え、運動不足もリスクファクターになる。
「リンは骨を構成する主要成分でもあるため、骨粗しょう症になると、骨の中に貯蔵されているリンが血中に漏れ出て腎臓に負担をかけます。つまり、骨粗しょう症を予防すれば腎臓も守れるということ。無理のない範囲で体を動かしてください。座りすぎを減らすだけでも、骨量の減少を防ぐことができます」
※女性セブン2022年11月3日号